銀行窓口販売における一時払い終身保険の危険性

 一時払い終身保険に関しての国民生活センターへの相談件数が急増。昨年の平成23年度は相談件数の約9割が60歳以上の者だと平成24年5月9日(水)の日本経済新聞が報じています。

 

 一時払い終身保険というのは契約時に保険料を全額支払い,一生涯にわたって死亡保障が得られる仕組みの生命保険です。


 年齢の比較的高い方がこの保険に魅力を感じるのは次のような理由によるものと考えられます。


1.死亡保険金が支払われても一定の範囲の保険金は相続税が非課税となります(500万円×法定相続人の数=非課税限度額)。
 定期預金にはない特典ですので相続の蓋然性が高まった年齢層には魅力的に映ります。


2.健康に少々の不安があっても,高齢であっても生命保険への加入が可能です。
 生命保険に加入していると安心だという信念に近い思い込みがあり,生命保険に加入できると言うだけでうれしくなってしまう傾向があると思います。


3.銀行の預金金利より生命保険料を計算する時に使用する予定利率が高い。
 販売を行う銀行窓口で預金金利,予定利率を並べて説明を受けると銀行預金と混同してしまいます。定期預金より利率のよい銀行預金のようなものと誤解をしてしまうのかも知れません。


 しかし,どれも誤解です。


1.につて言えば,現時点での税制ではその通りですが,今後税法の改正でその特典が廃止されるかも知れません。永遠に続く特典ではありません。


2.について。高齢になっての生命保険の加入の必要性は薄いと思います。
 余命幾ばくもないと宣告された人の保険加入の必要性について考えてみましょう。

 

 もし加入が可能だとした時の保険料は保険会社としていくら頂いたらよいでしょうか。死亡保険金1000万円の契約を引き受けるためには掛け金を1000万円頂かなければ計算が合いません。
 1000万円の保険を払ってもらうために保険会社に掛け金1000万円を支払っていることになります。無意味だとは思いませんか。銀行預金としてもっていても同じことになります。


3.についてです。預金金利と予定利率はそのまま比較することは無意味です。
 支払った保険料に生命保険会社が言う予定利率をかけたものが定期預金の利息相当額になるわけではないのです。窓口となった銀行に支払う手数料なども考えなければいけません。その額は支払い保険料の数パーセントと言われています。


 結局「解約払戻金額例表等で『予定利率1.15%』と謳われていても、実際には10年たっても、その半分以下の0.42%しかついていないという」計算もあります。
 http://gendai.ismedia.jp/articles/print/18134


 銀行窓口販売において預金以外の商品を扱うことによるトラブルが何度となく報道されてきています。改善されたようには思えません。


 今回の国民生活センターのデータでも80歳以上の方の相談が約4割に上っています。一般的には生命保険の必要がない高齢者に「銀行預金より高利回りの預金と同じ商品があります」といって販売して手数料稼ぎをしているのではないかと疑われても仕方がない状況です。


 銀行のこうした危険な勧誘を避けるためにはよく話を聞き不審を感じたら契約をしないことがまず原則です。
 しかし,判断能力が低下してきている高齢者にとってはそれを望むのは無い物ねだりです。周りのものが気をつけて支援して上げるほかありません。


 前回お話しした「見守り契約」を検討なさるのも一つの方法です。また,取消権がある法定後見制度の利用を考えてみてもよいと思います。


 いずれを検討するにしても,ことが起きてからでは解決が難しくなります。判断能力が十分あるうちに高齢者の判断能力の低下につけ込む悪徳商法に対抗する手段を事前に準備していく必要があります。

 

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