生活保護と親の扶養義務

河本準一さん事件

 
 お笑いコンビ「次長課長」の河本準一さんの母親が生活保護を受けているということで大騒ぎをしたことは記憶に新しいでしょう。
 結局この騒動は不適当ではあるが,違法ではないということで幕引きとなりました。要はモラルの問題だというわけです。

 本人にとってはその後の彼の芸能活動がこうむった影響は甚大なものだったのだろうと推察します。


扶養義務

 
  扶養義務は二種類に分けられます。
(1)生活保持義務
夫婦間,親の未成年の子にたいする義務をいいます。自分の生活と同質・同程度の生活を提供する義務があります。一片のパンがあればそのパンを皆に平等に分け与えなければなりません。


(2)生活扶助義務
成人した子とその親の間,兄弟姉妹間における義務をいいます。自分の社会的地位にふさわしい生活をした上でなお生活に余裕がある場合にはその余裕の限度で困窮している者を援助する義務があります。一片のパンがあれば自分の家族が食べてなお余りがあればそれを分け与えればよいのです。


 河本さんの問題は(2)の扶養義務があったかどうかの事実認定の問題だったわけです。


世帯単位の原則(子との同居・別居)

 
 私としては一つ気になったことがありました。それは,もし河本さんがお母さんと同居していたら違う結論になった可能性があるからです。


 今回はお母さんと河本さんは別居していたためお母さんの生活保護の認定について基本的にはお母さん単独の収入・資産が生活保護費支給の要件に該当しているか判断しています。


 もし,これがお母さんと河本さんとが同居していたとすれば河本さんの家庭の収入・資産を含めて母,妻,子,本人の最低生活必要額を満たしているかを判断していくことになったはずです。その計算ですと最近の河本さんの収入状況から見てお母さんの生活保護が打ち切られた可能性が高いのではないかと憶測してしまいます。


 このように生計を一にしている者(同居の者)の単位で最低限度の生活が営めるかの判断をしています。これを世帯単位の原則と呼んでいます


家族に対する価値観の変化に適合していない生活保護制度

 

 家族に対する二つの異なった価値観が,成人の親子が別居している場合と同居している場合の取扱いの違いにも現れているといえるでしょう。家族は自分の生活を犠牲にしてまでも保護しなければならないという家族を重視する考え方があります。他方,夫婦と未成熟子を家族の最小単位としていこうとする家族観があります。大家族(家)と核家族とのせめぎ合いがあり,その影響で生活保護法が人々に割り切れなさを残しているのではないでしょうか。


 生活保護法が最後のセイフティネットととして期待できるものになることを願います。

 

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