サービス付き高齢者住宅は終の住処となりえるか(2)

 前回の続きです。


3.終の住処としての安心度
 スタート時において介護度が低い高齢者,元気な高齢者への提供を想定した住宅制度なので介護度が上がった場合には本来はあまり適さない住宅です。しかし,スタート時のもくろみとは違い,介護の必要な人,健康に不安を抱えた人などの入居が実際にはおこなわれているようです。

 

 「終(つい)の住処(すみか)はどこに 老人漂流社会」という番組が2013年1月20日(日)にNHKから放映されました。この番組に対し『番組内において、「サービス付き高齢者向け住宅(以下サ付き住宅)では、認知症や医療が必要な方は住み続けることができない」、という印象を与える内容の放送』があったと、サービス付き高齢者向け集合住宅を運営する事業者の団体(サ住協)が反論を展開しています。。
http://www.kosenchin.jp/kosenchinDefault/2_2013_01_31/nhktokushunitsuite.pdf

 

 サ住協の主張はもっともですが,介護の負担・経済的な負担を考えますと実際的には退去して他の施設に移らなければならないのもまた事実です。

 

 サービス付き高齢者向け住宅は自宅ですし,借家権によっても守られていますので病気で入院したから,認知症が重度になったからといって住宅を出て行く必要はありません。賃料の支払いが滞ったということでもない限り,貸し主から契約を解除することはできません。

 

 しかし,自宅での介護と同じように本人をサービス付き高齢者向け住宅で介護を継続するには介護の担い手が必要です。高齢の単身者や高齢の夫婦生活者には介護の担い手がいないのが普通でしょう。いないからこそ,単身であるいは夫婦だけで生活をせざるをえなくなっていると言えます。

 

 また,他の施設に移って生活の場をそちらに移したときに現在の住居であるサービス付き高齢者向け住宅の賃料その他の維持費を支払うほどの余裕はないのが一般的です。介護付き老人ホームに入居するには入居時に高額な一時金を用意するほどの余裕はありません。そうした人達のための住居として用意したのがサービス付き高齢者向け住宅です。もともと老後資金が潤沢ではないのです。

 

 「終(つい)の住処(すみか)はどこに 老人漂流社会」は蓄えも乏しい高齢者を扱ったドキュメンタリーです。サービス付き高齢者向け住宅がこうした人達にとって終の住処とはいいにくいのが現状ではないでしょうか。

 

 老後の住居として質の高い住環境を提供すると言うことについてはたしかにサービス付き高齢者向け住宅制度は重要な機能を果たしていくでしょう。しかし,介護度が上がってきたときの住居として考えるときには不十分でしょう。人によっては終の棲家にはならないという事態が充分予想されます。

 

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