遺産分割が必要でない財産であっても相続税がかかるものもある

 前々回保険金と相続放棄についてみました。相続放棄のときに保険会社から支払われるお金を不用意に受け取ったり,使ってしまったりすると相続放棄が無効になってしまうというお話をしました。その結果,相続によって多額な借金を背負い込むことにもなる恐れがあると注意を促しました。

 

 その議論の中で「相続財産であるから勝手に処分すると相続放棄が無効になる。相続財産でないからもらった人は勝手に使ってよい」と述べました。

 

 今回は,死亡保険金などの受取にまつわる相続税についてみてみようと思います。相続財産と相続税とを混同している人が意外と多いのです。

 

 相続税の対象であることと相続財産であることは直接には関係がないということです。相続財産でなければ遺産分割協議の対象ではありませんが,税法で定められたいくつかの財産は本来相続財産ではないのですが,相続税が課税される「みなし相続財産」となります。

 

 死亡保険金は「みなし相続財産」です。入院給付金などの被保険者が受け取ることに約款(契約)で決められている支払金は「本来の相続財産」です。

 

(1)死亡保険金
 本来の相続財産ではありませんので受取人は死亡保険金を全額自分のものにすることができます。亡くなった人の本来の相続財産と合算して相続人全員で分割する必要はないのが原則です。

 

 「本来の相続財産」ではありませんが,相続税の課税対象となる「みなし相続財産」です。相続税の課税対象となる死亡保険金は契約者と被保険者とが同一となっている契約のみです。正確には被保険者が保険料を負担していた契約に基づいて支払われる死亡保険金です。被保険者とはその人の死亡によって保険金が支払われることになっている人のことを言います。それ以外の契約形態のものは所得税・贈与税の対象となります。

 

ア 契約者と被保険者が同一の保険契約で受取人が法定相続人のときには「みなし相続財産」に保険金控除の優遇措置が用意されています。500万円×法定相続人数の限度で非課税の控除を受けることができます。ご存じの方が多いと思います。

 

イ 受取人が法定相続人以外のときは前記非課税の特典はなく,死亡保険金全額が「みなし相続財産」として課税対象になります。

 

(2)入院給付金などの諸給付金
 まず,入院給付金を受け取った本人には所得税は課税されません。それが預金など本人の財産に組み込まれ,「本来の相続財産」となります。相続税が当然課税されます。

 

 受取人が相続人であっても死亡保険金の非課税の枠外ですので注意が必要です。

 

 見てきたように保険に関して,相続財産の範囲・相続税の課税対象について若干複雑です。遺産分割の対象になるもの,相続税の課税対象になるもの,死亡保険金の非課税の対象となるものを区別して考えることが必要になります。

 

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