独り占めされている他の相続人はその相続財産を時効で失ってしまうか(その1)

 前回遺産分割はいつまでにしなければいけないと言うことはなく,時効で遺産を相続できないことはない。という話をしました。今回はその続き,取得時効のお話です。

 

 自分のものでもないのに他の人が自分のもののような顔をして長い間人のものを使っていると,その使っている他の人のものになってしまうことがあります。これを取得時効と呼んでいます。

 

 取得時効が成立しますと人のものを使っていた人が使っていたものの元々の所有者に昇格します。そうしますと本来の所有者は他人の取得時効によって結果的にその所有権を失うことになってしまいます。この事態を取得時効の反射効として本来の所有者はその所有権を喪失するという言い方をします。

 

 自分のものだと信じてそのものを使い始めた(占有を開始)ときには10年間,人のものだと知っていたが自分のもののような顔をして使い続けたときには20年間その使用(占有)が継続したときには,実際には他人のものであっても自分のものになります。これが取得時効の制度です。

 

 ここで問題になりますのが相続人のひとりが相続財産を自分の手元に置いたままの状態で遺産分割がなされないまま時間が過ぎていく場合です。

 

 たとえば,相続財産は田舎の家と田畑のみ。以前から田舎の家に長男夫婦が親と同居している。その後親が亡くなりそのまま長男夫婦が田舎の家に住み続け,田畑を耕作する。そうしたことはよくありますが,その場合に長男は相続財産を取得時効で手に入れることができるのでしょうか。逆に言えば他の相続人は取得時効によって相続財産を失うのでしょうか。

 

 先に進む前に消滅時効が成り立つための条件をもう少し細かく見ておきたいと思います。条件は3つです。

 

1 所有の意思でする占有(自主占有)
 自分のものとして持っていることが必要です。泥棒がその盗品を自分のものとして持っていることも自主占有となります。しかし,借りた物を借りた物として使っていても自主占有とはなりません。所有者の気持ちではなく客観的に見て自分のものを使っているように見えるか,借りたものを使っているように見えるかが重要です。

 

2 その占有が平穏かつ公然であること
 堂々と自分のものとして扱うと同時に他からそれはお前のものではないというようなトラブルがないことも必要です。周囲からもその持ち主として客観的に認められていることも大事です。

 

3 その占有が10年あるいは20年継続していること
 占有の当初,自分のものと思い込み,そう思い込むことが無理からぬことと判断できるとき(善意・無過失)の時には10年,そうでないときには20年継続して占有していることが必要です。

 

 長くなってきましたのでこの続きは次回にいたします。

 

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