相続と農地法の許可・届出,相続登記

 興味のある方のみお読みになってください。少しマニアックになりますが,相続の形式による農地法許可の要否と第三者に対抗するための登記の要否について自分の覚えとして書き記します。

 

 まずは相続における農地法の許可について。

 

 原則として相続で農地を取得するときには農地法の許可はいりません。遺言による相続でも遺言の存在しない法定相続でもおなじで,許可は不要です。(農地法3条1項12号)

 

 おなじ遺言による相続でも遺贈の形式で特定の人に自分の財産を与える遺言の場合には農地法の許可について注意が必要です。この特定の人は相続人でない他の人でもまた相続人であってもかまいません。

 

 なお,特定の人が相続人である「特定遺贈」なのか「遺産分割の方法の指定・相続分の指定」なのかという細かい論議がなされていますが,実務的には「相続させる」という文言を遺言書に入れることによって相続人に対する「遺産分割の方法の指定・相続分の指定」であると判断されます。

 

 この遺贈には二種類あります。ひとつは特定遺贈といわれるものです。たとえば「自宅の土地建物は伯母Aあたえる」といった特定の財産の一部を他人に与えることをいいます。もうひとつは包括遺贈といわれるものです。たとえば「伯父Aに自分の財産の一割を与える」といった遺贈する目的のものを特定しないで自分の財産の一定割合を他人に与えることをいいます。

 

 特定遺贈については判断が分かれているようです。判例では必要とするもの,不要とするものとがあります。行政実務では必要説のようです。(『設例農地法 改訂版』宮崎直己著 新日本法規出版 p112)。

 

 一方包括遺贈については農地法の許可はいりません。(農地法3条1項16号,規則15条5号)

 

 次に農地の相続における届出について。

 

 平成21年12月から農地を相続した人で農地法の許可が不要であった人は市町村の農業委員会に届出が義務づけられました。遺産分割協議を要する場合は分割協議後登記を終了後に届け出ます。違反すると10万円以下の過料となります。(農地法3条の3第1項)。

 

 最後に相続における登記について。登記がなされていないと第三者に自分のものだとしてその正当性を争うことができなくなる場合が出てきます。

 

 遺産分割の前には各自の法定相続分については登記がなくても第三者にも対抗できます。遺産分割後はその分割について登記がないと対抗ができません

 

 遺贈については特定遺贈の場合は登記が必要であるという判例があるようです。包括遺贈については判例はないようですが,特定遺贈の判例が適用されると考えられます。(『民法Ⅳ 補訂版 親族相続』内田貴著 東京大学出版会 p496)。

 

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