やなせたかし氏の遺産相続(著作権)をめぐって

 ひとの財産のことをとやかく言ったところで,自分の懐が温かくなるわけではありません。やなせたかし氏の奥様は先立たれており,二人の間に子供がいらっしゃらないと聞き,遺産相続の一般論として興味が湧きました

 

(1)ほかの相続人はいらっしゃらないのか(法定相続人の存在)
 配偶者はすでになくなり,実子はなく,養子縁組もなされていないようです

 

 次の相続人の資格者は直系尊属(父母,祖父母など)になります。やなせたかし氏自身が長命で,94歳で亡くなられていることから考えると,すでに父母,祖父母も存命の可能性は低いと思われます。

 

 直系尊属もいないときの相続人の資格者はやなせたかし氏の兄弟姉妹。兄弟姉妹がすでになくなっているときには兄弟姉妹の子(やなせ氏の甥・姪)になります。

 

 こうした家族縁者がいないときには,故人と特別な縁故があった人や故人の療養介護に努めた人が裁判所の許可を得て遺産の一部または全部を相続することができます。特別縁故者に対する相続財産の分与と呼ばれるものです。分与後の財産は国のものになります。

 

(2)相続財産としての著作権
 「アンパンマン」をはじめ,やなせたかし氏は膨大な著作物を残しています。一説によると推定4000億円に上ると言われています。著作物の相続時の取扱いは民法の規定とは少し違った取扱いがなされます。

 

 ア 著作物の管理(利用)について
 複数の相続人がいる場合,相続したものは相続人全員の共有物となります。それを利用させたりするときには,相続分の過半数の者が賛成すれば利用させることができます

 

 ところが,著作物の利用については相続人全員が賛成しなければなりません。正当な理由がなければ反対はできないとされていますが,相続人の数が多いときにはかなり困難な場合も考えられます。

 

 イ 法定相続人がいない場合の取扱い
 通常,法定相続人がいない場合,特別縁故者がいるときにはその人にも遺産分与がされます。しかし,著作権については法定相続人がいない場合には,そのまま国の財産となってしまいます。著作権が国庫に帰属されるということになれば,「アンパンマン」のイラストも使い放題となります。死後50年間待たなくてもよいのです。

 

(3)遺言がなされていたのかどうか
 遺言がなされていれば遺産相続はその遺言にしたがって分割されます。遺言があったのかなかったのかは報道では確認のしようがありません。

 

(4)まとめ
 もし,遺言がなされていないときには法定相続の規定が適用されます。しかし,法定相続人に該当する人がおらず,特別縁故者のいないときには,すべての財産は国のものになります。著作権においては,特別縁故者への分け前もないまま国庫に納められてしまいます。

 

 やなせたかし氏のようなクリエーターの場合ですと,せっかくの作品が相続人同士の思惑のために作品を使ってもらえないことも発生します。

 

 やなせたかし氏は相続財産についての使い途に希望はなかったのでしょうか。もし,なにかお考えがあるのであれば,遺言書を残すのが賢明なやり方ということになります。

 

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