遺言は家庭の常備薬?

 相続税の基礎控除額が引き下げられるということで,相続について不必要なまでにご心配なさっている方がいます。相続税が課税されるのではないかと心配をするとともに,遺産の分割をめぐって争いが起きるのではないかと心配をして,遺言の書き方についてご相談に見える人が増えています。

 

 遺産分割時の紛争を避けるために,どこの家庭でも本当に遺言が必要でしょうか。遺言が必要だという話はいろいろなところで聞かれていらっしゃると思いますので,今回は遺言のいらない家庭について考えてみたいと思います。

 

1.遺産相続の争いを心配して遺言を検討する必要のない家庭

 

(1)相続人が1人もいない場合
 当たり前ですね。遺産争いを避けるためには遺言は扶養です。

 

 相続人が以内場合には借金を清算した残りは国の財産になってしまいます。それでは嫌だ,自分の意思に基づいて先に寄付をしたいという意向を持つ場合には別途,遺言を残すことを検討する必要があります。遺産争いを避けるという点においての遺言は必要がないということです。

 

(2)相続人が1人しかいない場合
 これも当たり前ですね。相続が争族になりようがありません。誰と争う必要もなく,相続人はすべて遺産を1人で受け取ることができます。

 

(3)相続する財産がない場合
 プラスの財産がまったくない場合だけではなく,少しは遺産はあるが借金が山のようにありトータルがどう計算してもマイナスになる場合も含みます。この場合には,相続人は面倒でも相続放棄の手続をしないと,亡くなった人の借金を背負い込むことになりますので注意が必要です。

 

 相続の放棄をしようとする人は家庭裁判所に,借金を残した人が亡くなったことを知って時から三ヶ月以内に申し出る必要があります。

 

(4)残す遺産が預金だけの場合
 財産として残すものが預貯金だけの場合には,遺産分割の話し合いをするまでもなく法定相続の割合で自動的に分割された額に決まりますので遺産の分け方で揉めることはありません。たとえば,預貯金が1000万円あり相続人である子供が2名の場合は,それぞれ500万円が自動的に相続した額になります。

 

 この場合は遺言が扶養かというと少し微妙で,法律的な最終的分け方は自動的に法定相続割合に決定されるのですが,相続人間に不満を残す結果になる場合も出てきます。「親の世話をずっとしてきたのは自分なのに,唯一残された財産である預金は均等に分けなければいけないのか」と不満を持つ人もでてきます。

 

2.まとめ
 ケース(3)は微妙としても,いずれも遺産相続の争いを避けるという観点からはどうしても遺言が必要とまではいえません。遺言を残すのか,残すととすればどういう内容が適切か。自分の家庭環境,財産の内容,財産処分の意向などを総合的に考える必要があるのではないでしょうか。

 

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