「人は女には生まれない。女になるのだ。」性別変更をした女性が特別養子縁組の母。

性同一性障害 性別変更後「母親」に 特別養子縁組認定(東京新聞2014年4月2日 13時57分)

  http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014040290135536.html

-------------------------------------------------------------------

 女性は二〇〇四年に性同一性障害特例法が施行された後、性別を変更。その後男性と結婚した。

 一〇年、児童相談所で里親になる手続きを進めながら、大阪市の民間福祉団体「家庭養護促進協会」に相談し、研修や面接を受けて一一年春に男児を迎え入れた。嫡出関係となる特別養子縁組の審判を夫婦で大阪家裁に申し立て、一二年冬に認められた。

 性同一性障害の当事者の親子関係をめぐっては、最高裁が昨年十二月、女性から性別変更した男性について、妻が第三者との人工授精で出産した子と嫡出関係を認める初の決定を出した。

-------------------------------------------------------------------

 シモーヌ・ド・ボーヴォワール『第二の性』の冒頭の句「人は女には生まれない。女になるのだ。」がすぐに頭に浮かびました。

 

 特別養子縁組を性同一性障害で性別を変更した人が越えなければならないハードルを考えてみたいと思います。

 

(1)特別養子縁組

 特別養子縁組とは実の親と縁を切ることを言います。実親子関係がなくなり,親は縁組先の義理の親だけとなります。普通養子の場合ですと,養子になった子は実の親と義理の親を持ちます。

 たとえば相続において,普通養子は実の親と義理の親の両方の親から財産を相続できますが,特別養子は義理の親の財産を相続するだけです。

 

(2)「養子と養親との適合性」「試験養育期間」

 試験養育期間をはじめる前に,養親との適合性が判断されます。児童相談所などが特別養子縁組を斡旋するととき,この適合性も考慮しています。

 性同一性障害者が「健全な親子関係が営めるか疑問」などの判断から,性同一性障害にともない性別を変更した人への養子の斡旋を躊躇することもあるようだと記事は伝えています。

 6ヶ月以上実際に暮らした試験養育期間の看護状況が家庭裁判所が特別養子縁組を認めるかどうかの考慮材料になります。

 

(3)養子になる子の父母の同意

 「子どもと関係を切ることは実の親としても言い出しづらいため、結果的に同意が得られず養子や里親への委託が進まないケースも多い。」という。

 ただ,父母の同意については例外がありますが,なかなか認められませんでした。裁判所は最近の判決で「子供の利益」を理由に「父母の同意」なしで特別養子縁組を認めました

 

 特別養子縁組「実の親不同意でも成立」(NHKニュース4月3日 20時53分)

 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140403/k10013484631000.html

 

(4)まとめ

 今回の判決は生物学的な男性が自らの性を「女性」と定めて,母の役割を選び取りました。また,生物学的な女性が自らの性を「男性」と定めて,父の役割を選び取るという事例もあります。

 

 どちらの事例も,その正当性を認める判決が下されています。性や家族の多様性の時代を象徴しているようです。まさに,シモーヌ・ド・ボーヴォワールのいう「第二の性」ではないでしょうか。

 

 

            055-251-3962    090-2164-7028

                                         困り事や相続・遺言のご相談,許認可のお問い合わせは

                                                                                   ⇒ 神宮司行政書士事務所

 

 

コメント: 0