実の親がなぜ養母

1.未成年である婚外子と実母との養子縁組

未婚で長男を出産した。出産届出により母の戸籍において長男の母となる。父の欄は空欄。

その後,長男の父親ではない男性と結婚。長男と男性との養子縁組を希望。
母の婚外子である長男を男性の養子とするには男性とその妻(長男の実の母でもある)と共同で縁組をする必要がある。
その結果,男性を筆頭者とする戸籍には「長男の実の母」という記載と「長男の養母」という両方の記載がされた。

http://www.asahi.com/articles/ASG3W5TVMG3WPTFC019.html

という趣旨の記事が平成26年4月8日(火)の朝日新聞朝刊に載っていましたので,すこし調べてみました。

2.夫婦縁組(同意型)

配偶者がいる人が誰かと養子縁組をしようとするときには,養親・養子になるそれぞれの配偶者の同意を得ることが必要です。

①養親が夫婦者で成人を養子とするとき
②配偶者の未成年嫡出子を養子とするとき
③養子が夫婦者であるとき

3.夫婦縁組(共同型)

夫婦者が養子縁組をするには夫婦が揃って縁組をしなければならない縁組です。

①配偶者の未成年である嫡出でない子を養子とするとき
このときには夫婦が揃って養子縁組をしなければなりません。
このケースを新聞が取り上げたわけです。

4.夫婦共同縁組の実益

なぜ,未成年のしかも配偶者の嫡出子でない子供についてだけ夫婦が共同して養子縁組を結ばなければいけないということにしたのでしょうか。新聞でも言うように実の子を自分の養子にするというのは不自然すぎます。この規定は民法795条にあります。

私が調べた範囲では嫡出子と非嫡出子の相続受取額の不利益を避けるためにおかれた規定のようです。

たとえば,記事の例にしたがえば,妻の長男は妻(実母)と養子縁組を結ばない限り非嫡出子のままです。結婚後に子ができますと,その子は嫡出子になります。つまり,お母さんは非嫡出子である長男と嫡出子である二男の子がいることになります。妻が死亡したときの長男と二男の相続額は,民法改正される前には二男が長男の倍を相続するという規定になっていました。

こうした子供の不利益を避けるための規定だと思われます。つまり,妻に実母であるのにさらに実子との養子縁組を認めたのは,婚姻後の夫婦共同の養子縁組によって非嫡出子の身分を解消しようとしたのではないでしょうか。
女性の場合の婚外子を採り上げていますが,男性の場合の婚外子(認知したいわゆる私生児)についても同様です。

5.夫婦共同縁組の実益の消失(まとめ)

非嫡出子の相続分は嫡出子の半分であるという規定が改正され,子供であれば嫡出子であれ非嫡出子であれ,子供の相続額は均等とされました。したがって,未成年の非嫡出子のみ夫婦が揃って養子縁組を結ぶ必要がなくなったといえます。

なお,記事中に

「養母」にならななければ夫と共同親権者にはなれない

とありますが,養親と実親とは共同親権者となるというのが通説のようですのでこれはもともと夫婦共同縁組の実益ではないといえます。

※2,3の同意型と共同型は逆ではないかとの指摘を受けました。ご指摘のとおりですので訂正いたしました。

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コメント: 2
  • #2

    神宮司行政書士事務所 (火曜日, 17 4月 2018 17:51)

    ご意見ありがとうございます。
     おっしゃるとおり、わたしも特殊なことだとはおもいません。

  • #1

    私の祖父母の場合 (月曜日, 16 4月 2018 16:57)

    実際に戸籍を確認したところ、私の祖母は、実の子供である私の父を養子に迎えています。

    私の祖父母が離婚した際、祖母が父を養育することになったのですが、そのままでは祖父の戸籍に私の父が取り残されるため、離婚と同日に私の父を養子としたもののようです。

    正式には裁判所の面倒なやりとりが必要なのでしょうが、戦前には、このやり方が一般的に認められていたようで、遺産相続目的ではなく、当時は普通にあった手法であるということをご理解いただきたく、投稿しました。