エンディングノートの落とし穴(作成上の注意点)

エンディングノートが花盛りです。

自分の履歴,反省をつづった自伝,自分を中心とした家系図,病歴・治療歴,リビング・ウィル,臓器提供の意向,葬儀の希望など。思いつくものすべてをエンディングノートの記載項目にあげてエンディングノートの名のもとに売り込んでいます。

たとえば,第二の人生を始めた人が自分の人生を見つめ直し,これからのことに思いをはせる機会を得ることは,悪いことではありません。しかし,エンディングノートという名にこだわる必要はないのではないかと思います。「老後の生活設計」です。文房具店で売っているノートでも充分です。

気楽に始められるエンディングノートですが,エンディングノートを書き残したために巻き込まれるトラブルもあります。それをいくつかあげてみたいと思います。

(1)個人情報の漏洩

市販されているエンディングノートの項目を立ち読みしてみてください。他人に知られたくないことが一杯です。財産目録などはその典型でしょう。ものによっては子供にも知られたくないことも含まれています。

どこに保管したらよいのかが難しいのです。

大事なものだからといって貸金庫にしまい込んでしまうと,たとえば葬儀の希望,献体の意思などの希望はかなえられないということになってしまいます。本人が亡くなった後に貸金庫を開けるのは,手続がかなり面倒なのです。

かといって,リビングルームの机の上に置いておくのも躊躇されるでしょう。誰にでも公開できる内容ではないのです。

どうしても,エンディングノートの形式で自分の気持ちを残したいというのであれば,項目別にノートを分けてつくることをお勧めします。保管の方法は書かれた項目に応じて保管方法を考えるのです。

(2)遺族との意見の相違

エンディングノートにおいて,自分の将来の希望や介護,葬式などの希望を述べる項目も用意がされています。しかし,これはあくまでもエンディングノートを書くものの願望です。遺族の立場では社会的な制約もたくさんあります。本人が希望しているからといっておいそれとそれに従うわけにいかない事情も出てきます。

たとえば,「お墓への納骨は不要。遺骨は散骨を希望」とエンディングノートにあったとします。遺族としては亡くなった親の希望にできればそってあげたいとは思うのが人情でしょう。とはいえ,菩提寺との関係,親戚との関係などから希望に添おうとすれば,遺族自身がトラブルに巻き込まれる可能性が強くなります。遺族の立場にも配慮が必要ではないでしょうか。

(3)遺産分割協議の紛争の種

遺言がなされずにエンディングノートが出てきた場合,その解釈をめぐって相続人が争うことが予想されます。エンディングノートには遺言書としての法的効力はないといっても,遺産を分割するうえの基準にはなりえます。「お父さんがこういっているのだからこの家は俺がもらう」などという主張が出てきます。

特に財産にかかわることはエンディングノートには一切書かないことがこうしたトラブルを少なくするための最低限の注意です。

さらに,エンディングノートは何種類も書かないというのも大事です。市販のエンディングノーを買ってきて書き始めたが,どうもしっくりしない。前のエンディングノートは書き掛けにして,また,新しいエンディングノートを購入してくる。また,書き始めるが気に入らない。そうして,書きかけのエンディングノートが何冊もできあがると言うことがままあります。これも,遺族を悩ませる元になります。微妙に書いてあることが違っていたりして,どれが本心か理解に苦しんでしまいます。

(4)エンディングノートの落とし穴への対策

エンディングノート作成の落とし穴に対する対策を考えてみましょう

①記載項目ごとにエンディングノートを分冊にしてうえで,それぞれのエンディングノートについて適切な保管に心がけるようにします。

残される者の都合にも十分配慮して,エンディングノートを作成することが大事です。

遺言書をエンディングノートとは別に作成し,エンディングノートが遺産分割時の紛争の種にならないようにします。合わせてエンディングノートには財産の処分に関することは一切ふれないようにします。財産関係は財産目録までにしておくのがよいと思います。

(5)まとめ

エンディングノートに自分のこと,自分の希望を書いておけば事足りると考えないことが大事です。自分ひとりで人生の最終章を送ることはできませんし,当然自分人生の幕を下ろすことはできません

家族に自分の考えを伝えるとともに,家族の意見を聞くことがエンディングノートの落とし穴を避けるいちばんの対策でしょう。よく話し合い,意思の疎通を図っておくことが大事です。

意思の疎通がうまくいっている家庭であれば,エンディングノートのほとんどの部分はいらなくなります。

 

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