若年期認知症の家族がカミングアウト(認知症の人と家族の会山梨県支部)

平成26年4月26日(土)山梨県立青少年センターで「認知症の人と家族の会山梨県支部(あした葉の会)」主催の研修会が開催されました。

久保田正春氏(日下部記念病院認知症医療疾患センター 院長)の基調講演,[『若年期認知症について』家族との幸せな時間を少しでも長く!・・]。引き続いて,シンポジウム 「~ 関係者による各々の立場から ~」がおこなわれ,盛会のうちに終了しました。

研修会を通じてわたしが理解した若年期の認知症の家族が抱える問題をレポートしたいと思います。

若年期認知症の家族のカミングアウト

わたしが席に着くとまもなく,初老のご夫婦とその息子と思われる方が,演題のステージに登場しました。その夫はギターを弾きながら歌を歌い始めました。二曲目,妻が楽譜をめくり,「主人は今弾いた曲がなんだったのか忘れてしまうので,わたしが次の曲を指定します」と解説をしました。認知症の方とその家族が演じていたのです。
一見したところ,仲のよい家族が揃って夫のギターを弾きながらの歌を楽しんでいる風情です。若年期認知症の重荷を背負った家族にはとても思えませんでした。

認知症の人とその家族が若年期認知症であることを明らかにした上で,公開の場で発言するのはきわめてまれのようです。認知症の人と家族の会山梨県支部でも,初めてのケースです。

シンポジウム
シンポジウム

若年期認知症の人は全国で3万7800人,山梨県では392人だそうです。ただ,若年期認知症の定義も定まっていないような状況ですねので,今後,実態を把握していく必要があります。

基調講演に続くシンポジウムでは介護者の立場でシンポジウムに参加され,発言をなさっていました。吹っ切れたような明るさが非常に印象的でした。その他,シンポジウムには司会者として平井前会長,久保田医師,山本さん(県課長)が登壇しました。

若年期認知症の家族が抱える問題

(1)収入の減少

勤務先を退職せざるを得なくなり,収入が途絶えてしまいます。
この方の場合は,58歳頃の発症で早期退職優遇制度が利用できたために経済的な負担が少なくてすんでいます。会社に出入りに必要な暗証番号がわからなくなるというのが,周りが認知症に気づいたきっかけだったようです。

(2)デイサービス利用の難点

引き受け手のデイサービス提供施設は,高齢者の多い施設に若い人を受け入れるのを避けたがるようです。また,若年期の認知症の人もまた,高齢者ばかりの施設に通うのを嫌がります。介護施設が高齢者認知症を中心として運営されてきているという問題点もあります。特別養護老人ホームの優先入所枠にはそもそも,若年期の認知症の人は該当していないという話も披露されました。
この方の場合は,施設の1日の行事の中にギター演奏に合わせみんなで歌を歌う時間を組み入れていただき,それをきっかけに本人が積極的に通所するようになりました。

(3)車の運転をやめさせる困難

若年期の認知症の場合は,高齢者の認知署と違い問題の箇所は海馬の変性だけで,肉体機能には問題はないために本人は活動的です。移動手段として車の運転をして出かけようとします。しかし,認知症による視野認識に難点があり,車の運転は危険です。
この方の場合も,やめさせるのに非常に苦労をされたようです。車をやめさせ,バイクをやめさせました。現在は,電動自転車にして妻が伴走しています。「傍からは仲の良い夫婦にしか見えないでしょうね」と笑って話しておられました。

(4)家族の息抜き

夫に常時付き添わなければいけないのが常態です。妻は自分の時間を持つこともままなりません。また,父が壊れていく姿は,子どもにとって精神的な影響は大きいものがあります。
この家庭では,夫をデイサービスに送り出したあとの時間を使い,友達とのおしゃべりを通じて息抜きをされているようです。デイサービスは現在週二回の利用です。また,夫の往診時などに介護者である妻も自宅で診察,理学療法の施術を受けるなどのケアーを受けることによって介護者の体調を良好に維持できているようです。

(5)監督義務者の賠償責任

若年期の認知症の人に車の運転をあきらめさせることが難しいという話が出ましたが,それに関連して事故を起こしたときの賠償責任について心配していました。先日の名古屋高裁の判決も話題になりました。
この裁判のことについては2013年12月11日づけで公益法人 認知症の人と家族の会が声明を発表しています。

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