離婚と離縁,認知症の人との離縁は可能でしょうか

1.日常語としての離縁

離婚というのはどういうことかは説明するまでもないと思います。それでは,離縁とはなんでしょうか。昔「三下り半」という離縁状がありました。離婚を夫が妻に言い渡す証文が三行半であったところからその名が来たといわれています。ここでは「離縁」とは「離婚」を意味しています。辞書を見ますと「夫婦または養親子の関係を絶つこと。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]となっています。

2.法律用語としての離縁

日常語としては離婚のことも離縁といいますが,民法で離縁といった場合は離婚は含まず,養子縁組を解消することをいいます。離婚のことは頻繁に取り上げられますが,養子縁組を解消する離縁のことはあまり語られていません。すこし,調べてみました。

3.離縁の方法

離縁に関する民法の規定は離婚の規定とパラレルに決められているようです。離縁の方法は協議上の離縁と裁判上の離縁が規定されています。

(1)協議上の離縁

当事者が協議して養子縁組を解消する方法です。離婚における協議離婚のパターンです。
養子が15歳未満の場合は,離縁後に本人の法定代理人となるべき人が本人に代わって協議をします。これを代諾と呼んでいます。

協議とすこしずれますが,養親または養子が亡くなったときには,生きている養親または養子が家庭裁判所の許可を受けて離縁することが可能です。夫婦の一方が死亡したときの姻族関係の終了については,家庭裁判所の許可はいりません。意思を表示したときに姻族関係が終了すると定められています。

(2)裁判上の離縁

これも,離婚における裁判上の離婚のパターンです。離婚原因として認められるのは5種類ですが,離縁の原因は3種類のみです。離婚理由の不貞行為と強度な精神病で回復の見込みが亡い場合の2種類が含まれていません。

①他方から悪意で捨てられたとき
②他方の生死が3年以上わからないとき
③その他,養子縁組を継続することがむずかしい重大な理由があるとき
(民法814条1項)

4.認知症の人との離縁

認知症の人との離縁は可能でしょうか。

(1)協議離婚

認知症の人でも意思能力が回復している場合には単独でも離縁ができます。しかし,意思能力が回復しているかどうかの判断は実際上むずかしいのでは亡いでしょうか。

(2)裁判上の離婚

認知症の人と離縁をしたいと希望する場合はその人の法定後見人を相手に離婚の裁判をすることになります。離縁の理由の③その他,養子縁組を継続することがむずかしい重大な理由があるときに当てはまるかどうかということになります。離婚において病気の相手と離婚が認められる場合もあると聞きます。であれば,認知症の人との離婚も認められる可能性はあるかもしれません。とはいえ,そのハードルはかなり高いものであり,容易に家庭裁判所が認めるところとはならないと思います。

 

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