「成年後見 なぜ不人気?」,利用率は3%にも満たない

2014年7月8日(火曜日)の日本経済新聞の生活欄に編集委員の後藤直久氏の「成年後見 なぜ不人気?」というコラムが掲載された。コラムの話の筋を追いながら,この問題を考えてみたいと思います。

 

1.成年後見の対象者の利用率は2%

 

最高裁判所の統計によれば,平成25年12月末での成年後見制度の利用者数は17万6564人です。成年後見制度というのは成年後見,保佐,補助,任意後見を指します。一方,成年後見制度を必要とする人は800万人と推定されているようです。その内訳は,記事によりますと認知症高齢者が約460万人,知的障がい者が約70万人,精神障がい者が約270万人です。

 

法律が想定している要支援者のうち実際に成年後見制度の支援を受けているのはたかだか3%にも満たないというのが現状です。

 

最高裁判所の統計:http://www.courts.go.jp/vcms_lf/20140526koukengaikyou_h25.pdf

 

2.成年後見制度が利用されない理由

 

(1)支援が必要な本人が利用を望まない

 

「自分はまだしっかりしているので後見人はいらない」と主張して成年後見制度の利用を望まない場合があります。自分が認知症であることを認めるのを嫌がるのは,認知症が持つ特徴でもあります。法定後見の申立てには医師の診断書が必要ですが,認知症の診断を受けるために本人を病院に連れて行くのに苦労している家族が多々います。

 

(2)成年後見制度利用にともなう権利制限

 

成年後見制度の成年後見,保佐を利用する場合には権利制限が加えられます。自分の判断だけでは財産の管理,処分ができなくなる場面がでてきます。職業に就くための資格制限もあります。たとえば,いままで自分が経営してきた取締役でいられなくなります。

 

詳細は当ブログの以下の記事を参照して下さい。

ア 法定後見を受けることによる社会生活上の不利益

イ 任意後見と法定後見の関係

 

(3)家族が申立てをしない家族が改めて法定後見の申立てをわざわざ行って,後見人になるまでもないのが実態です。

 

明らかに成年後見制度の利用が必要と思われる場合でも,支援している家族が申立てをしないということも多々あります。

 

認知症がおもくなって介護施設に入所させなければならなくなることもありますが,介護施設の入所にあたって家族が本人に代わって契約をすることを認めている施設は多いのです。

 

介護費用などの支払いに充てるために,預金の引き下ろしが必要になります。本人のキャッシュカードを利用すれば,特別な手続なしに引き下ろしは可能です。キャッシュカードがなくても印鑑と通帳があれば引き下ろしが可能なのが実態です。

 

たいていの手続は家族であれば本人の代理が可能なのが現状です。手続をする家族にはその権限がないという意識はありません。家族だから当然だと思っているようです。

 

3.外部からの強制による成年後見制度の利用開始

 

さきほどの最高裁判所の資料によりますと,成年後見制度の申立理由の第一位は預貯金等の管理・解約(2万8108件),第二位が介護保険契約(施設入所等のため)(1万2162件)です。定期預金の満期・解約などについては金融機関の取扱いが厳格になるために,やむをえず成年後見の申立をおこなっている様子が,うかがえます。また,介護施設も入所にあたっては代理権限のある後見人等でないと契約を受けつけないところも増えてきています。

 

4.まとめ

 

成年後見制度の利用が2%にとどまっているのは,日本の社会全体が戦前の家制度の考えを引きずってきている影響が大きいのではないかと思います。老いた親の財産は親をみる長男が管理するということに違和感を覚える人は多くはありません。

 

親の財産は親の財産であり,その親の財産を処分・管理するためにはたんに子どもであるというだけでは足りないというしっかりした社会的合意が確立される必要があるのではないかと感じています。

 

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コメント: 10
  • #10

    神宮司公三 (日曜日, 06 3月 2016 09:45)

    具体的な問題をひとつひとつ解決していくしか,仕方がありません。
    少しでも,よい方向に向かえばいいですね。

  • #9

    みなみ (土曜日, 05 3月 2016 22:16)

    反論のコメントでも削除されないところからして 誠実なすばらしい方だと思いますが、、

    最後の一文
    「親の財産は親の財産であり,その親の財産を処分・管理するためにはたんに子どもであるというだけでは足りないというしっかりした社会的合意が確立される必要があるのではないかと感じています。 」 についてですが

    ほんとうに おかしな話です

    親だから 扶養しろ 介護しろ (わかりますとも)
    親名義のお金は親のもの (わかりますとも)

    介護しろ 親のお金は使うな (はあーー???? そんなこと可能な人は少ないですよ)

    お金はね 使うためにあるのです
    親はなぜ お金を貯めておくのか?
    そりゃ 介護で子どもに苦労させたくないからですよ

    「同居して世話をしてくれ お金はいっぱい貯めてあるからね それ使ってね」という
    親もいることでしょう

    でもね
    それを この後見制度が 破壊しているんですよ

    親子の合意は 関係ないそうで
    すべて 横領横領です

    子どもは 仙人ですか?食べずに生活できるんですか?天からお金が降ってくるんですか?
    介護=仕事できない=収入ない=親のお金を使ったら横領(親は使ってほしいって言ってるのに)

    こんな くだらない制度を作られたおかげで
    心ある優しい子どもは 法的な防御を事前にとらなくてはならなくなった
    たとえば任意後見ですけど あれも お金がかかります なんでもかんでもお金です

    ほ ん と う に 親子を露頭にまよわせ 深く傷つけ
    いったい 誰のための 何のための制度なのか、、

    あ、、、いたいた 利益がある人
    それは  介護を逃げて 相続だけしたい一部の子ども
    それと 報酬という名の大金を手にするかたがた
    (なにしろ 管理だけすればいいのですから 福祉サービスって 施設しかわからないくせに)

  • #8

    神宮司行政書士事務所 (月曜日, 16 11月 2015 17:32)

    貴重なご意見ありがとうございます。
     ご指摘のような問題も指摘されていますね。

  • #7

    家裁は司法職のハロワ状態 (日曜日, 15 11月 2015 22:43)

    認知症の親が法的トラブルに巻き込まれたので
    致し方なく、成年後見制度を利用しましたが・・・
    な~んのメリットもないですよ。
    親族対立という理由で弁護士が選任されましたが
    最悪です。

    家裁は、弁護士に甘いらしく、
    領収書の添付は10万円以下は不要。
    収支報告も廃止(東京のみ)。
    でもって、事実行為する家族への通帳の開示はなし。

    この弁護士たちは、タクシーやレンタカー乗りまわしてますよ~。

    で、プライドだけは高く、後見人より良いことを介護者がすると、
    不貞腐れてしまい、「後見人軽視だ!」とか言いますし、
    何かと家裁を隠れ蓑にして
    「家裁がそう言っている」
    「家裁の判断だ」
    「家裁と協議した結果・・」
    が口癖?

    何の権利擁護もしてくれず、
    年間報酬は初年度は100万円位になる見込み。
    次年度からは50万円相当。

    乞食と専門職後見人は一旦やったら
    美味しすぎて辞められない現状もあります。

    弁護士は、福祉的要素に理解なく、家裁と利害は一致。
    家裁の後見センターは弁護士不況を救う、ハロワ状態。

    弁護士後見人だと、土地など不動産を
    家族の許可なしに、家裁にとっとと取りつけて勝手に売却して
    付加報酬をた~んまり貰いますよ~。

    これはこれで、認知症の金持ちの独居老人は
    カモリスト入りで大変ですよ~。

    うちも、十分、カモられていますよ~。


    この制度の運用の問題点は、
    本人の権利擁護を履き違えている家裁の偏見に満ちた
    判断基準にあります。

    今は、資産があれば、専門職が自動的に選任される時代。

    理由は、親族は、自分に受贈分を残そうとする悪いヤツ
    &自己利益を追求する横領可能性が十分ある奴

    て視点。

    でも、弁護士の高額な横領には、鷹揚ですね。

    だってお仲間だから・・・。

  • #6

    神宮司公三 (火曜日, 07 7月 2015 21:35)

    みなみさん
     かなり,お疲れのようですね。詳細がわかりませんの憶測で少しアドバイスをさせていただきます。
    ①レシートの管理:クレジットカードなどで履歴が残る支払い方法を検討。
    ②妹さんの土地の売却:姉の補助のない妹の預金・現金のみで帳簿をつけ,生活ができないことを裁判所に示す。生活費のために妹さんの不動産を売却する許可を得る。
     本人の財産があるのに,なぜ姉であるあなたが負担しなければいけないのか,私には理解できません。扶養義務は本人に生活する財産がない場合ではないでしょうか。
     これ以上のことは,ここでの相談の限界を超えています。お近くの包括支援センターなど適当な相談の窓口をおたずねください。

  • #5

    みなみ (火曜日, 07 7月 2015 19:34)

    ずいぶんと日にちが経ってしまいました。
    丁寧なお返事感謝いたします。

    まず私は妹(重度の知的障害)と同居しておりません。
    知的障害とはいえ買い物は独りでできます。車いすは太りすぎたため歩くのをぐずったときのためで旅行の時だけ使っているだけで買い物は自力で行けます。
    栄養の意味もわからず買い物は大好きなので お菓子を中心に買いたい放題ですが、領収書の意味が理解できず、ゴミ分別もできませんので、
    行って世話をする時に、掃除しながらレシート捜しをして 出納簿を経理しています。
    本人に現金を渡しているのですが(毎日の買い物用) 金額が合うことは一度もありません。

    この件に関して、裁判所とは おっしゃったとおりのことはすべてやりましたが、
    「居宅は面倒なので引き受けてくれる人がいないため辞退は不可」(本当は報酬が少額のため引受人がいないとのこと)
    「報酬は不可。交通費も最低限の公共機関の料金しかダメ(特急料金は出さないとのこと)」

    それから 帳簿に関しては私は職業上プロですので完璧です。負担でもありません。簡単です。
    ですが 証拠書となるレシート捜しだけでも2日かかります。こちらがたいへんなんです。
    ベタベタの床のゴミをレシートがはさんであると見落とすので 一枚一枚丁寧に検査しながらの掃除です。これが、、、5部屋あります。トイレはいつも詰まっているので汚物だらけです。

    私の貴重な時間が こんなくだらない作業に費やされるのが我慢できません。
    そもそも 妹はほとんどお金がありません。私がかなりの寄付をしています。
    出納簿の最初の行は 「姉より送金」○万円 からスタートです。
    意味があるのでしょうか?

    この件について 裁判所とずいぶん話しましたが、相続でかなりの土地を妹は持っていて それが財産として計算されているとのこと。しかも 私がかってに売ってはいけないとのこと。
    売らないということは すなわち ずっと私が自分の給料から送金しつづけるということです。

    さっぱりわかりません。
    そもそも妹の財産でさえ (本人は働いたことがないため)亡き親と私がせっせと積み立ててやったものです。

    わたしが怒りを持っているのは
    一般的には おっしゃるとおりですが、それはあくまで自分で働いてきた高齢者の話ではないでしょうか?
    なぜ土地を売ることさえ裁判所に拒否されているのか?まったくもって理解ができません。
    土地を売ることは すなわち「本人の利益に反する」そうですが
    では 生活費を私がずっと送っているのは 「扶養の義務」だそうで、、

    という理由で、周囲の人に相談されたときは 包み隠さず成年後見のバカらしさをコンコンと説明しているのです。
    ちなみに 家裁は会計はド素人、福祉もド素人。忙しすぎて帳簿の検査もロクにできません。
    ほんとうに監査をするのなら それなりの人に委託すべきだと思います。

    最終的にこの制度がつぶれることを心から祈っております。
    目的はすばらしい。しかし運用がでたらめです。

    職業後見人さまをバカにしているわけではありません。
    この制度は一部の人しか恩恵がないと言っているのです。

  • #4

    神宮司公三 (金曜日, 12 12月 2014 18:58)

    みなみさん
     私が書いている間に,追加の投稿をいただいていました。追加の投稿について,私の感想を述べさせていただきます。
     みなみさんのおっしゃっていることはもっともです。一般の方は自分の家計簿をつけるのでさえ億劫です。まして,すべてに領収書を取り付けなければならないとなると家計簿などつける気も起きません。
     ところが,後見人になるとすべての脂質に領収書を取り付け,家計簿をきっちりとつけることを家庭裁判所に要求されます。とても,重荷です。そして,その責任は妹さんが亡くなるまで続きます。
     そうした事情がありますので,私は後見人を引き受けるという方には大変ですよと必ず申し上げることにしています。善意だけではとても続けられるものではありません。
     今後の道はふたつです。ひとつは,妹さんの資産が潤沢であれば,後見人としての報酬を家庭裁判所に請求して下さい。自分の仕事として帳簿をつけ,領収を取り付けると考えれば納得もできるのではないでしょうか。
     もうひとつは家庭裁判所の許可が必要になりますが,後見人を辞退する道です。
     基本的には他人のお金を預かって,それを本人のために使うというスタンスが成年後見制度です。他人のお金を預かって,その使い途を家庭裁判所に報告していると考えれば,帳簿付,領収書の添付などの義務は理解がいただけるのではないかと思います。

  • #3

    神宮司公三 (金曜日, 12 12月 2014 18:31)

    みなみさん,妹さんの支援,お疲れさまです。
     具体的なことがわかりませんので,適切なアドバイスになっていないかもしれません。
     家庭裁判所の目指すところも,みなみさんの目指すところも「本人の幸せな生活」です。「本人の幸せな生活」についての見解がみなみさんと家庭裁判所でずれてしまったのかも知れません。
     そうであれば,家庭裁判所とよく話し合われることをお勧めします。

    最初のいきさつはともかく,せっかくはじめた成年後見にです。妹さんの幸せのために,もうひと頑張りしてみてくれませんか。

  • #2

    みなみ (金曜日, 12 12月 2014 18:21)

    つい感情的に書いてしまいました。

    要点を書きますね。

    成年後見制度の最大の落とし穴は
    第三者から見ると(裁判所)
    お金を使わない=家族が横領をしていない=めでたしめでたし

    しかし、、
    お金を使わないと楽しいことはできません。
    人件費やいろいろな準備をして車椅子での小旅行。
    ほんとうにたいへんです(安全 予算組、、)

    家族がゆえに できるだけ普段の生活はより便利に負担がないように、たまには外食や小旅行もさせてあげたい、、

    しかし!です
    裁判所は
    とにかく 出費が大嫌い

    お金を使う= 横領してない?疑惑疑惑

    領収書をはじめ 計画書 企画書 請求書 見積もり 領収書 ほかいろんなものを要求される

    こんな ばかげた負担 誰がしますか?

    一番 あたまにきたのは
    ボランティアの方に 実費(交通費のみ)をあげたら
    その領収をもらえと!

    はあ???お礼ですよ
    お礼のお菓子に お菓子にですよ! たしかにもらったというボランティアの人の住所氏名捺印(捺印ですよ!)がいると

    バカみたい!
    というわけで
    今は 裁判所の指導とおり
    とにかくお金をつかわない
    お金をつかわない = 本人は 幸せ?

    本人の幸せって 自分のお金を使わないで
    相続人のために残すこと?

    喜ぶのは 相続人だけ

    矛盾!

    すみません。やっぱり感情的になって要点にならなかったわ。

    とにかく 私たち夫婦は こんな制度ぜったいに利用しない!って相談してるし
    周囲の人にも、細かく 良い点悪い点説明しています。
    全員 いいます。 「家族仲が良い場合は ほんとうにバカみたいな制度だ」と

    一部の 金持ちで独り身で施設行きの人には ほんとうによい制度だと思います。
    ただ、、それだけです。
    一般的じゃない。

  • #1

    みなみ (金曜日, 12 12月 2014 18:13)

    妹(重度の知的障害)の法定成年後見人をしております。
    (相続がらみでしかたなく、、です)
    この制度は 認知症の親ならば恩恵があり 貴方さまのおっしゃるとおりだと思いますが、兄弟姉妹の場合は 百害あって一利なし。こんなでたらめな制度はやめてほしい。
    (兄弟姉妹の障害者という限定ですが)
    裁判所が 障害者の生活に対する理解が欠如しており(高齢者と同様に考える)話がまったく通じない。膨大な資料を要求され理不尽な意味不明なことも要求される。少なくともケアマネレベルの法律の知識はもっていてほしいが プライドがあるのか?覚えようともしてくれない。
    というわけで 最近は もう積極的な世話もせず放置です。
    これが裁判所の監査もスムースにいき 私のストレスもない、、

    裁判所が要求することは 「お金を使わないこと」=善
    家族がしてあげたいことは 「お金を使って幸せな生活を送らせてあげたい」

    バカみたい、、ほんとうにバカげていて憤りを感じる。