「生活保護法の概要と改正点について」市担当者の研修をレポート

昨日,生活保護法の概要と改正点(平成26年7月1日施行)について,甲府市の福祉部生活福祉課の保護係長(指導員)から説明をいただいた。そのときのレジュメにわたしのメモを添えます。メモとした部分は,私が研修内容を聞き取ったものとそれに対する私の感想です。

 

最近の話題である生活保護申請の「水際作戦問題」,「芸能人生活保護不正受給問題」,「生活保護費受給者のパチンコ・アルコールによる浪費問題」などに興味がある人は,後半の○その他以下をご覧ください。

 

○生活保護法の概要

 

1.生活困窮世帯に対する,「健康で文化的な最低限度の生活」の提供

 

⇒日本国憲法25条に基づく。

 

2.世帯単位での認定

 

⇒同一世帯での認定が原則だが,例外もある

 

メモ:世帯分離などで対応

 

3.世帯の収入だけでは定められた「最低生活費」に足りない場合,それを補う制度

 

⇒働いて収入があっても保護は受けられる。

⇒「収入」とは,あらゆる金銭的収入のほか,現物も含まれる。

 

メモ:「最低生活費」については意見がいろいろあるところである。収入では不足する部分を補う制度である。

 

4.各種の制約が生じる

 

⇒収入申告の義務や車両の保有や使用の制限,随時の訪問調査に応じることや,心身に問題がない稼働年齢の者では求職の義務が生じる。

 

メモ:稼働年齢とは中学卒業時から65歳まで。自動車の朋友保有については別項での解説があるのでそちらを参照。

 

○生活保護法の主な改正点について

 

1.自立支援制度の強化

 

⇒自立支援給付金制度の制定や,高校生アルバイト収入の取扱い

 

メモ:

①自立時(生活保護世帯でなくなるとき)に就職支度金のようなものが支給される。

②高校生アルバイト収入については,事前計画に基づいてその収入の一部を世帯収入から除くことができる。いずれの制度についても,不正防止のために種々の制約が設けられている。

 

2.医療費の適正化

 

⇒医療機関の登録における有効期間の設定や,ジェネリック医薬品の利用推奨の継続

 

メモ:ジェネリック医薬品については,その医学的効果について疑問を持つ医師もいる現状で,ジェネリック医薬品をむりやり押しつけるのは問題があると私は思う。

 

3.不正受給対策の強化

 

⇒調査に対する回答の義務化や,不正受給に対する返還金の扶助費からの引き去りなど。

 

メモ:

①過去の不正受給の調査について金融機関,公官署には回答の義務はなかったが,改正によって受給中のみだけでなく,過去の受給についても調査ができるようになった。

②悪意の有る不正受給(生活保護法78条)については,本人の同意の上ではあるが,生活扶助費のなかから直接天引きすることができるようになった。旧来は,いったん生活扶助費を支払い,本人が自主的に返還金を支払うことになっていた。

 

○その他

 

メモ:その他については,山梨県行政書士会が事前に研修の解説を希望しておいたものである。

 

1.申請について

 

申請の意思がある場合,申請者としての要件を欠かなければ誰でも申請は可能である。申請書の交付を求められた場合には,交付しなければならず,また申請された場合には受理を拒むことはできない。

 

⇒明らかに保護を受けられと判明している状況でも受理しなければならないが,受理=保護決定ではなく,そのような場合には受理後に却下の決定を行うことになる。(次項参照)

 

メモ:

①回答は「申請のあつた日から十四日以内にしなければならない。但し、扶養義務者の資産状況の調査に日時を要する等特別な理由がある場合には、これを三十日まで延ばすことができる。」(生活保護法24条第三項)

②いわゆる水際作戦について,甲府市ではそうしたことは行っていない。県内のほかの市町村においてそうしたことが行われている形跡はある。そこの自治体から甲府市に流れ込んだ申請が実際にあった。

③申請書が提出されたなら受理をせざるを得ないし,また,所定の申請書以外でも受理をしないわけにはいかない。

④申請権者は,本人,親族,正式の代理人。いずれの場合にも最終的には本人の同意が必要である。弁護士,行政書士などの士業を同伴して窓口に見えた者は,過去にはほとんどなかった。

⑤自宅,自動車などを保有している人であっても生活保護申請はできる。ただし,最終的には原則として売却をすることになる。

⑥借金・ローンの支払いのための申請は認められない。自己破産などの別の処理を行う必要がある。

 

2.却下について

 

申請受理後,各種の調査をおこなった結果,保護の受給要件を欠く場合には申請却下の決定が行われる。

 

メモ:

①住居を持たないいわゆるホームレスの申請も受けざるをえない。この場合には住居確保からスタート。

②却下した具体例。暴力団関係者であった。忘れていた預金があったなど。却下数は少ない。

③福祉事務所の決定に不服があるときには山梨県知事に対して不服申立をすることができる。

 

3.自動車の保有

 

原則的には自動車の保有や使用は認められない。

 

⇒日常的に絶対に必要なものではないことや,事故の場合の対応が難しいこと,維持費用の捻出がむずかしいことなどが理由である。

⇒認められる場合の例としては,自動車を使用する仕事をしている場合や障害等により公共交通機関の利用が著しくむずかしい場合などであり,このような場合でも目的外の利用は原則的に認められない。

 

メモ:

①自動車を保有したままで申請はできるが,最終的には処分することになる。

②原付バイクについては,その使用の許可範囲を広くとっている。ただし,原付バイクの自賠責保険と任意保険の加入を義務づけている。

 

○「生活保護のしおり」(甲府市福祉事務所)についての解説

 

1.親や子,兄弟姉妹などの援助が受けられるときは,援助を受けて下さい。

 

保護の絶対的要件ではありませんが,民法上扶養義務があり,援助できる場合には生活保護法より優先して援助を受けていただくことになります。

 

メモ:

①全面的な援助をお願いしているわけではない。たとえ少額であっても援助ができないかというお伺いである。

②援助できるのにできないと回答しても現在の生活保護法では不正にはならない。罰則がない。道義的な責任はともかく,法的な責任は追及できない。

③お笑い芸人の次長課長の「河本準一の母、生活保護不正受給騒動」。現在の生活保護法では不正受給ではない。たとえ,河本準一に母親を養うの十分な収入があったとしても,援助できるゆとりはないと回答されれば,それ以上の追求はむずかしい。現場にたずさわっているものとしては,法律的に緩いという印象を持つ。

 

2.生活のムダをなくし,計画を立てて,生活をしましょう

 

メモ:生活保護を受けているものが,パチンコ・アルコールに保護費を使っているという非難が寄せられるが,現在の生活保護法では直接禁止する方法はない。現場担当者としては,アルコール中毒患者に対してだけでも禁止できる立法化を希望する。

 

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