相続放棄は自分の家の近くの家庭裁判所に申し出てもかまいませんか。

1.相続をするかどうかの選択権

 

相続が発生すると相続人は亡くなった人の財産を相続する(受け取る)かしないかを選ぶことができます。(1)単純承認をするか,(2)限定承認をするか,(3)相続放棄するかのいずれかを3ヶ月以内に決めなければなりません。この3ヶ月の考慮期間を「熟慮期間」とよんでいます。

 

(1)単純承認

 

亡くなった人の財産も借金も一切合切を引き継ぎます。もし,借金が相続したプラスの財産よりも多ければ,相続した人は自分の財産を使って借金の支払いをしなければなりません。

限定承認,相続放棄の手続を塾量期間中にとらなくて3ヶ月の期間が過ぎると,自動的に単純承認をしたことになります。

 

(2)限定承認

 

借金を返し終わって,残額があればその分だけを相続します。相続人全員がそろって家庭裁判所に申し出る必要があります。相続する者からすると有利な方法ですが,諸手続が煩雑であり,手間がかかります。実際に限定承認を選択する相続人は,ごくわずかです。平成21年(2009年)では総死亡者数114万人のうち,限定承認の申述があったのは978人です。率にしまして0.1%です。

なお,3ヶ月の熟慮期間を過ぎている相続人がいても,ひとりでも3ヶ月の熟慮期間中の相続人がいれば,共同申立てが可能です。

 

(3)相続放棄

 

相続を一切しないと宣言をします。具体的には家庭裁判所に申述(申出)します。相続放棄はほかの相続人とは関わりなく,単独でおこなうことができます。申述が家庭裁判所に受理されますと初めから相続人ではなかったことになります。

 

以下の図表は平成13年から平成21年までの家庭裁判所で取り扱った「限定承認」「相続放棄」「遺産分割」の件数などを示したものです。

http://fpdiary.blog23.fc2.com/blog-entry-210.html から引用)

 

2.限定承認・相続の放棄の申述先(裁判管轄)

 

相続の放棄は家庭裁判所に申し出るとさきほどいいましたが,どこの家庭裁判所に申し出たらよいのでしょうか。相続放棄をしようとする人の近くの家庭裁判所でかまわないのでしょうか。それとも,亡くなった人(被相続人)の住所の最寄りの家庭裁判所に申し出ればよいのでしょうか。それとも,被相続人の死亡地の最寄りの家庭裁判所になるのでしょうか。

 

相続放棄などの相続の選択は「被相続人の住所」を管轄する家庭裁判所に申し出ます。(家事事件手続法4条)

 

①被相続人の住所というのは一般的には住民票上の住所です。

②住民票上の住所ではないところを「生活の本拠」としていた場合は,生活の本拠地が被相続人の住所です。

③日本に住所がなかったり,住所が不明の場合は,居所を被相続人の住所とみなします。居所は生活の本拠地とまではいえない生活の場のことです。

④日本に居所がなかったり,居所が不明の場合は最期の住所地を被相続人の住所地として管轄の裁判所を決めます。

 

3.まとめ

 

相続を放棄したり限定承認をしたりする場合には,被相続人(死亡した人)の住所地を管轄とする家庭裁判所に申し出る必要があります。

 

長い間音信不通であった者の相続を放棄する場合には注意が必要です。住所地が相続を放棄するものの住所から遠方であるのが,普通です。また,住所不定のような生活を送ってきている可能性もあります。

 

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