身体に障害がある人が採用できる遺言の方式

1.身体障害と遺言の普通方式

 

遺言をするには法律に定めた形式に従わないと,その遺言は無効になってしまいます。
身体に障害があるために遺言の方式が限定されてしまうこともでてきます。

 

遺言の普通方式とは以下の三種類です

①自筆証書遺言(民法968条)
②公正証書遺言(民法969条)
③秘密証書遺言(民法970条)

ここでは身体障害がある人として以下の障害を考えます。

①口がきけない者(言語機能障害)
②耳が聞こえない者(聴覚障害者)
③目が見えない者(視覚障害者)

 

2.各身体障害と採用可能な遺言の普通方式

 

(1)口がきけない者(言語障害者)

 

言語障害者は普通遺言のすべての遺言方式が採用可能です。


①自筆証書遺言
自筆証書遺言においては,遺言者がその全文,日付,氏名を自署し押印する必要がありますが,口がきけないものには自書・署名・押印する能力があります
したがって,言語障害者は,自筆証書遺言の能力がありますので採用可能です。


②秘密証書遺言

秘密証書遺言は以下の手続が必要です。

ア 遺言者が遺言の内容が書いてある文書に署名・押印する
イ 証明押印した文書を封筒に入れてさきほど押印した印で封印する
ウ 公証人・証人の前でその封印した封筒を差し出して「自分の遺言書であり,筆者の氏名・住所を申し述べる」


「自分の遺言書であり,筆者の氏名・住所を申し述べる」代わりに通訳を通じて述べてもよいし,封紙に自書してもよいとされています。(民法972条1項)
したがって,言語障害であっても秘密証書遺言が可能です。


③公正証書遺言

公正証書遺言は次の手続を踏む必要があります。

ア 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で伝える(口授)
イ 公証人が遺言者の言った内容を筆記する
ウ 筆記したものを遺言者・証人に読み聞かせるか閲覧させる
エ 遺言者・証人が口頭で伝えた内容が正確に筆記されていることを承認をし,各人が署名・押印する。
(署名ができない場合は公証人がその理由を添え書きして署名に代えることができます)

 

口がきけない場合は,本人が口頭で公証人に伝える代わりに通訳によって遺言の趣旨を伝えることもできます。(民法969条の2 1項)
したがって,言語障害者は公正証書遺言が可能です。

 

(2)耳が聞こえない者(聴覚障害者)

 

聴覚障害者は普通遺言のすべての方式が可能です。


①自筆証書遺言

自書・署名ができますので,聴覚障害者は自筆証書による遺言が可能です。

②秘密証書遺言

秘密証書遺言は以下の手続が必要です。

ア 遺言者が遺言の内容が書いてある文書に署名・押印する
イ 証明押印した文書を封筒に入れてさきほど押印した印で封印する
ウ 公証人・証人の前でその封印した封筒を差し出して「自分の遺言書であり,筆者の氏名・住所を申し述べる」


耳が聞こえない者は,いずれの手続も問題がありません
したがって,聴覚障害者は秘密証書遺言が可能です。


③公正証書遺言

公正証書遺言は次の手続を踏む必要があります。

ア 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で伝える(口授)
イ 公証人が遺言者の言った内容を筆記する
ウ 筆記したものを遺言者・証人に読み聞かせるか閲覧させる
エ 遺言者・証人が口頭で伝えた内容が正確に筆記されていることを承認をし,各人が署名・押印する。
(署名ができない場合は公証人がその理由を添え書きして署名に代えることができます)

 

上記ウの「筆記したものを遺言者・証人に読み聞かせる」代わりに通訳人の通訳によってすることもできます。(民法969条の2 2項)
したがって,聴覚障害者は公正証書遺言が可能です。

 

長くなってしまいましたので(3)目が見えない者(視覚障害者)につきましては次回といたします。

 

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