嫁さんの家の土地にある夫婦共有建物,嫁さんの早死にで土地明渡し?(相続時精算課税と所有権の追補)

以前に「嫁さんの家の土地にある夫婦共有建物,嫁さんの早死にで土地明渡し?」という記事を書きました。
その記事の中で,相続時精算課税制度の利用を検討してみたらどうかという提案をしています。

②相続時精算課税制度を使い土地をを父親から娘に生前贈与

 相続時精算課税制度を利用して土地を娘から生前に贈与することによって,2500万円までの土地であれば,さしあたって出費(課税)なしで娘に譲ることができます。こうすれば家の建っている土地は晴れて妻のものとなります。地代の心配もありません。

 

嫁さんが嫁さんの父親より先に亡くなってしまったときの相続時精算課税と所有権について説明が不足していましたので,少し補足をしておきます。

 

一 相続時精算課税制度の適用を受けた贈与で受贈者より先に贈与者が死亡した場合

 

父が娘に土地を贈与して,相続時精算課税制度の適用を受けた場合で,父親が亡くなる前に娘が亡くなってしまったという場合の取扱です。

 

(1)父が娘に贈与した土地の所有権

父が娘に贈与した土地の所有権は,娘に贈与されたのですから当然娘に所有権が移ります。したがって娘の夫から見ますと,その土地は嫁さんのものと言えます。
もし,嫁さんが亡くなったとしますと,その土地は夫とその他の法定相続人が相続することになります。


相続時精算課税制度の適用を受けた贈与であっても,適用を受けない贈与であっても,所有権が受贈者に移ることにはかわりありません。

 

(2)相続時精算課税の精算

 

①贈与者が受贈者より先に死亡したとき

受贈者が贈与者の相続時に相続税の精算を行うことになります。
ここでは,娘が父親の相続時に相続税の精算を行うことになります。

 

②受贈者が贈与者より先に亡くなったとき

ア 受贈者の相続人が贈与者の死亡時に受贈者の相続税分を負担します。

相続時精算課税制度の適用を受けた贈与分に関して,贈与者が死亡したときに受贈者の相続人が贈与者の相続税について精算するものがあれば精算します。
ここでは,娘の相続人である夫とその他の法定相続人が相続時精算課税の納税義務を負います。

参照:国税庁 受贈者が贈与者より先に死亡したときの納税義務の承継

 

イ 受贈者の相続財産にかかる相続税

夫とその他の法定相続人は,贈与を受けた土地を含めた妻の相続財産について別途に通常の相続税を納める義務があります。

相続時精算課税の納税義務とこの通常の納税義務をとらえて二重課税になると評する人もいますが,父親の財産に対する相続税,娘の財産に対する相続税と考えれば特別に加重された二重課税ではないと思います。

 

二 まとめ

 

相続時精算課税制度の適用をうけて嫁さんが贈与を受けた土地について,嫁さんが贈与した父親より先に死亡した場合。
(相続時精算課税制度は贈与税支払いの特別な規定であり,贈与契約の効果とは別のものです。)

 

①土地の所有権は嫁に贈与時に移動して,嫁の死亡時に嫁の夫その他の法定相続人がその土地を相続します。
②夫その他の法定相続人は嫁の相続税が課税されます。
③嫁の父が死亡したときには,贈与を受けた土地の相続税の精算もすることになります。

 

参考(国税庁)
相続時精算課税のあらまし
平成27年1月1日以降,相続時精算課税の適用要件の改訂

 

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