遺言者が相続させようとする者より先に死亡するとは限りません(予備的遺言)

人の命は儚いものです。自分が先に死ぬだろうと考えて遺言をしていたところ,自分の方が長生きをしてしまうということも起こります。 そうしたことに備える遺言の方法のひとつとして,予備的遺言と呼ばれるものがあります。補充遺贈と呼ばれることもあります。 今回は,予備的遺言について考えてみようと思います

 

具体例で話を進めていきます。 遺言者本人とABCの三人の兄弟。推定相続人は他にはいない。そしてBには子どもDが一人だけいるという設定で考えてみます。

 

1.予備的遺言(補充遺贈)とは

 

(一)受遺者の死亡による遺贈の失効

 

遺言例1:「遺言者はその有する一切の財産を遺言者の弟であるA(昭和30年5月5日生)の相続させる」

 

遺言者が兄弟のうちのAだけに自分の全財産を相続させるという遺言を書いたところ,遺言者である本人が亡くなる前に相続させるつもりのAがなくなってしまったという場合,この遺言は効力を失ってしまします


(民法994条)遺贈は、遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。

 

「遺贈する」となっている遺言書は当然ですが,「相続させる」となっている遺言書でも同様にその遺言は効力を失ってしまします


参照:平成23年2月22日最高裁判決
(概要)http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=81092
(全文)http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/092/081092_hanrei.pdf

 

(二)受遺者死亡を停止条件とする遺贈の追加

 

遺言例2:「ただし,上記弟が遺言者より先又は遺言者と同時に死亡した場合は,上記弟Aに相続させるとした財産は,上記弟Aの長男D(平成2年3月10日生)に遺贈させる」

 

Aが遺言者より先に死亡したときには,Aにすべての財産を相続させるという遺言は失効してしまいます。その結果,遺言者が死亡したときには,B,Cの兄弟とAの代襲相続人であるAの子Dが遺言者の財産を均等に相続することになります。

 

遺言者よりAが先に死亡した場合に,どうするかを遺言書で明らかにしておくことを予備的遺言(補充遺贈)と呼びます。
なお,遺言者とAが同時に死亡した場合にもAに相続させるとした遺言は失効します。本人が死亡したときに相続する人は生存している必要があり,同時に死亡した場合には相続することができないという理屈になります。これを「同時存在の原則」と言います。

 

2.「相続させる」と「遺贈する」

 

(一)「相続させる」,「遺贈する」の語の使い分け

 

上記の遺言例2において,Aの場合には「相続させる」を使用し,その子Dには「遺贈する」の語を使用しています。
これは,「相続させる」は推定相続人に使用し,「遺贈する」は推定相続人以外に使うという原則に従っています。

 

この遺言書を作成したときにはAは生存していますので,その子Dは推定相続人ではありえません。Aが死亡することによってその子Dは推定相続人となります。したがって,Dについては「遺贈する」の語を使っています。

 

「相続させる」という遺言の法律的な効果についての説明
ブログ:「相続させる?,遺贈する?どっちがどっち(遺言の基本用語)
を参照してください。

 

(二)「相続させる」,「遺贈する」で不動産登録免許税に差

 

「相続させる」と「遺贈」の大きな違いは、不動産所有権移転登記の際の登録免許税率で、「相続させる」で1000分の4、「遺贈する」で1000分の20となり5倍の差があります。
しかし,弟Aに相続させてその子のDに遺贈しても法定相続人であれば税率は1000分の4で変わりません。
平成15年4月1日法務省民二第1022号通達

 

3.まとめ

 

遺言時に想定した受贈者が,遺言者より先に死亡したときのことも考えて遺言書を作成することが必要になることもあります。 そのとき,予備的遺言(補充的遺贈)をして自分の意向を遺言に反映させることができます。

 

予備的遺言例完成形: 「遺言者はその有する一切の財産を遺言者の弟であるA(昭和30年5月5日生)の相続させる。ただし,上記弟が遺言者より先又は遺言者と同時に死亡した場合は,上記弟Aに相続させるとした財産は,上記弟Aの長男D(平成2年3月10日生)に遺贈させる。」

 

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