父親の相続放棄すると祖父の相続もできなくなるか(相続放棄と代襲相続)前編

父親が借金紛れであったので,父親の相続を放棄する。そうするとまだ健在のお祖父さんの相続も放棄したことになるのか。」ということが話題になりました。今回はそのことを考えてみたいと思います。

 

1.相続放棄とは

 

(1)相続放棄の方式(民法938条)

相続をするかしないかは相続人の意思次第です。相続したないと思えば,相続放棄の手続きをとります。

 

①家庭裁判所への申述
相続の放棄は,家庭裁判所に申し出てその許可を得る必要があります。相続人は各自自分の判断で単独で申出が可能です。

②熟慮期間
相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内に申し出る必要があります。

③生前の相続放棄
相続の放棄は,本人が生きているときにはその財産の放棄をすることはできません

 

(2)相続放棄の効力(民法939条)

 

相続放棄の申立てが家庭裁判所の申述受理審判を受けることによって,相続放棄の効力が発生します。
相続を放棄したものは,その相続において最初から相続人でなかったことになります

 

①相続人への相続放棄の影響

例えば,配偶者が相続放棄をすれば,相続人としての配偶者がいないとして相続人を考えていきます。また,例えば3人の子どものうち2名が放棄したときには,相続人の子は1名のみと考えます。さらに,子ども3人全員が相続放棄を行えば,次順位の相続人である父母が相続人に繰り上がります。

②相続割合への相続放棄の影響

例えば,配偶者が相続を放棄すれば,子どもたちの相続割合は子ども3人とすれば,各自3分の一ずつになります。子どものうち2名が相続放棄をすれば,子どもの相続分は残された子どもが全部相続することになります。

 

相続放棄・代襲相続図2.代襲相続(民法887条2項,889条2項)

これからの説明において誰のことをいっているのかわからなくなりましたら,右の関係図で確認をしながらお読みください。

 

(1)代襲相続人

 

①代襲相続人は,相続人の子であるとともに被相続人の直系卑属です。(図では長男のことです)
②相続人の配偶者は代襲相続人にはなれません。(図では母のことです)

 

(2)代襲原因

 

以下の3つの原因によって代襲相続が発生します。

①相続開始以前の被代襲者の死亡

図でいいますと,祖父の死亡以前に父が死亡していることが必要です。そのときに,代襲相続が発生します。
祖父と父が同時死亡でも該当します。同乗していた飛行機事故で二人とも死亡したときなどが同時死亡の例です。

②被代襲者が相続欠格となったとき

相続欠格制度とは,例えば,「相続人が被相続人を殺害した場合には相続人になれない」といった類のものです。民法891条に5つの相続欠格事由が掲げられています。
図でいいますと,父が相続欠格者である場合です。

③被代襲者が廃除されたとき

図でいいますと父が祖父によって廃除されたときに代襲相続が発生します。廃除とは遺留分を有する推定相続人から相続人である資格を奪う制度です。被相続人に対する侮辱などの著しい非行があったときに認められます。

 

すこし長くなってきましたので,続きは次回とさせて頂きます。

 

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