「直葬(ちょくそう)」と呼ばれる葬儀の究極の簡略化

 最近の葬儀の事情は,大きく変わろうとしているというのが実感です。
 私が属している村落でも,葬儀への関わりが大きく変化しています。旧来は集落で,葬儀の一切を取り仕切ってきていましたが,いまではその役割は葬儀業者に替わられています。集落の役割は,葬儀のときの帳場においての香典の受付などに限定されています。

 今回は,簡略化が進む葬儀の様子について概観してみます。

1.葬儀の様式

 葬儀関係の資料を眺めていますと,いろいろな新しい葬儀の様式が出てきています。その呼称は葬儀業界で統一されているとは言いがたい状況にあります。

①家族葬

 近親者だけ,あるいはごく親しくしていた者達による少人数による葬儀のことを言うようです。

②一日葬,ワンデーセレモニー

 通常2日間にわたって執り行う葬儀のセレモニーを一日に圧縮しておこなうものです。夜型のものもあるようです。

③直葬(ちょくそう)

 通夜や告別式などの宗教的行事をおこなわないで,火葬のみをおこなわないものをいいます。火葬場の火葬炉の前でお経を上げる儀式をすることもあるようです。

 家族葬は葬儀の規模を縮小,一日葬は葬儀のセレモニーを簡略化・圧縮,直葬は宗教的なセレモニーを省略しているといえます。

2.直葬

(1)直葬での葬儀

 直葬は「焼きのみ」などと呼ばれることもあるようです。
 その名のとおり,通夜,葬儀,納骨などの宗教的セレモニーをおこなわないで,火葬だけで済ましてしまおうとするものです。究極の簡略化といえます。

(2)直葬における法的手続きの流れ

①死亡届(戸籍法86条,87条)

 市区町村長に7日以内に届出をする必要があります。
 医師による死亡診断書が必要になります。

②火葬許可書の申請(墓埋法5条)

 火葬のときには火葬の許可,土葬のときには埋葬許可を市町村長から受ける必要があります。
 死亡届と同時に火葬の許可書も取り付けます。

③火葬

 火葬場の管理者に火葬許可書を提出(墓埋法14条3項)
 火葬後に火葬許可証に火葬を行つた日時を記入し、署名押印後に提出者に返却(墓埋法規則8条)
 返却された火葬許可書は焼骨の埋蔵,収納のときに必要になります。

④遺骨の自宅安置

 納骨をすることは法律上の義務ではありません。
 遺骨をいつまでも自宅に保管しておくことは違法ではありません。

3.遺骨の取扱

 遺骨は旧来は墳墓に埋蔵したり,納骨堂に収蔵してきました。
 昨今は,遺骨について考え方にも変化が出てきています。

①手元供養

 遺骨や遺灰の一部を置物やペンダントの中に納めたりして,自分の身近において供養する人もでてきました。

②樹木葬

 旧来のように墓所,納骨堂に遺骨を納めるのではなく,樹木を石碑に見立ててその下に埋蔵することが人気になっています。

③散骨

 遺骨を粉状にして,海や山や野に撒くものです。

④送骨

 納骨・永代供養のために遺骨の処分としての納骨をしてもらうために,寺に遺骨を郵送するということがおこなわれています。
 引き取り手のない遺骨の取扱としても注目されます。

4.まとめ

 家族意識,祖先に対する意識,村落の消滅,個人主義の浸透という葬儀を取り巻く環境は大きく様変わりしてきています。
 その究極の姿が直葬(「焼きのみ」)なのではないでしょうか。

 

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