1.前回のまとめ
前回,全血の兄弟姉妹関係とその兄弟の一人が亡くなった場合の相続割合につて考えてみました。
再掲しますと以下のとおりです。
兄弟姉妹の一人が亡くなり,その亡くなった人(被相続人)に子などの直系卑属,親などの直系尊属もない場合,
相続人となる兄弟姉妹の相続分は均等であるのが原則です。
ただし,被相続人と全血の兄弟姉妹関係にある兄弟姉妹の相続人は,半血の兄弟姉妹関係にある兄弟姉妹の相続人の半分となります。
一つ注意をしてほしいのは
全血・半血の兄弟姉妹関係が相続分に影響するのは,亡くなった人(相続人)に子などの直系卑属の相続人も親などの直系尊属の相続人もない場合に,兄弟姉妹が相続人になるときのみであることです。
たとえば,父親の相続においては全血・半血の兄弟姉妹関係であるなしにかかわらずその相続分は均一です。
2.養子縁組
(1)養子縁組により発生する兄弟姉妹関係
養子と血族の兄弟姉妹は,実の兄弟姉妹と同じ法律的な扱いを受けます。たとえれば,親に子がひとり増えたことになります。
「養子縁組をした親(養親)とその親と血族関係ある人達」と「養子縁組をした人(養子)」は,血族関係があるとみなされます。(民法727条)
つまり,親が養子縁組をするとその親と血のつながりがある子たちはその養子と実の兄弟と同じ関係になります。
血のつながりのある血族を自然血族,養子縁組によって発生する血族を法定血族といいます。
こちらのブログも参考にしてください。
(2)養子の実方の血族と養方の血族との関係
養親に子がひとり増えただけですので,養方と実方との親戚関係は生じません。
養親の血族(養方の血族)と法定血族関係になるのは養子だけです。また養方の血族は,養子の血族(実方の血族)とは血族関係は発生しません。
養子になった者だけは,養方の子であると同時に実方の子でもありますので,両方の血族と親戚関係が継続します。ただし,特別養子については実方の親戚関係が消滅します。
また,養子縁組によって法定血族関係になった養親の血族である兄弟姉妹は,養子の実方の血族とは親族関係が発生することはありません。
3.養子の全血・半血の兄弟姉妹関係
(1)養子に関する全血・半血の判断基準
新たな血のつながった兄弟姉妹として養子をとらえ,全血・半血の兄弟姉妹かを判断します。
養子縁組によって親に実の子がひとり増えたことになることから,養子と養子を迎えた兄弟姉妹との全血・半血の関係は親との血族関係が全血か半血かによって判断することになります。ここでいう血族関係とは自然血族と法定血族の両方を含みます。
(2)いくつかの例示
いずれの例も死亡した子には配偶者はなく,子どもなどの直系卑属,親などの直系尊属もいないという前提です。
①例1
父母の間に子1と子2の実子2人生まれ、
その後父母と養子縁組をして養子ができた。
その後で、実子の子1が亡くなった場合、
残った実子子2と養子の法定相続分はそれぞれどうなるか。
「死亡した子1」と「子2及び養子」ともに法的に同一の父と母であるので,死亡した子1とは全血の兄弟姉妹関係となります。
したがって,子2の相続分と養子の相続分は同じです。二分の一がそれぞれの相続分となります。
②例2
父母と養子縁組をした養子がいて、
その後父と母1が離婚、
さらにその後父が母2と再婚して子1と子2の実子が2人生まれた。
その後で、実子の子1が亡くなった場合、
残った実子の子2と養子の法定相続分はそれぞれどうなるか。
「死亡した子1」と「実子の子2」は父と母2が同じですので,「死亡した子1」と全血の兄弟姉妹関係です。
「死亡した子1」と「養子の子」は父は同じですが母は同じではありませんので,父を同じくする異母兄弟です。ですから,「死亡した子1」と半血の兄弟姉妹関係となります。
したがって,養子の相続分は子2の相続分の半分です。子2の三分の二,養子の三分の一がそれぞれの相続分となります。
4.まとめ
兄弟姉妹のうちの死亡した兄弟姉妹(被相続人)の父・母と相続する兄弟姉妹(相続人)の父・母がともに同一の場合は全血の兄弟姉妹関係であり,片方だけが同じ場合は半血の兄弟姉妹関係となります。
被相続人である兄弟姉妹と半血の兄弟姉妹関係にある兄弟姉妹の相続分は全血の兄弟姉妹関係にある相続人の兄弟姉妹の相続分の半分となります。
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