相続税を払わずに雲隠れ,誰が払うのか(相続税の連帯納付義務)

1.相続税の支払い

 相続した人がそれぞれ自分の相続税を支払えば,それで納税は完了と思うのが普通でしょう。
 ところが,税金の世界では事情が少し違うようです。

 相続人のひとりが相続税の支払いをしないまま雲隠れをしてしまった。その人には,税務署が差し押さえることができるような財産はない。税務署はしょうがないなと言って,税金の取り立てをあきらめてくれるでしょうか。

 今回は,このことについてみてみようとおもいます。

2.相続税の連帯納付義務(相続税法34条)

(1)相続税の連帯納付義務

 相続税の支払いができない相続人がいる場合は,連帯責任で相続税の支払いをする必要があります。
 あいつの相続税をなぜ俺が払わなければいけないのだと,文句を言うことができないと決められています。

(2)連帯納付義務の範囲

 無制限に連帯納付の責任があるわけではありません。
 その相続で受け取った相続財産の利益の範囲で,連帯責任により支払いの義務があります。

(3)例外として連帯納付義務が亡い場合
①申告期限から5年を経過した場合

 申告期限から5年が経過しても,税務署長から連帯責任で相続税を納めるように通知を受けなかったときには,連帯納付義務がなくなります。

②納税義務者が延納の許可を受けている場合

 延納の許可後に相続税の支払いが困難になっても,他の相続をした人達は,延納の許可を受けた納税の範囲については連帯納付義務はありません。

③納税義務者が納税猶予を受けている場合

 たとえば,農地における納税猶予がなされた場合には,他の相続をした人達は,納税猶予を受けた範囲についての連帯納付義務はありません。

参考:http://www.kurashi-able.jp/file/4834453200.pdf

3.連帯納付義務が発生する事例

(1)相続時精算課税を選択した場合

 相続時精算課税制度は生前に贈与を受けていた分を贈与税ではなく、相続発生時に相続税として支払う制度です。
 相続税の支払時期が贈与を受けたときではないために,相続発生時に無一文と言うことも考えられます。
 この場合には,他の相続をした人達に連帯納付義務が発生します。

参考ブログ:
相続時精算課税制度とは,なにもの
相続時精算課税制度とは,なにもの(続)

(2)遺産分割協議において現金・預金のみを相続した場合

 相続人のひとりに多額の借金があり,その返済に充てたいので現金・預金を相続したいということがあります。
 相続税を支払わずに借金の返済にすべて充ててしまい,相続税の支払いに充てるような財産がない。といった場合に,その相続税の支払いの義務が他の相続をした人達に回ってきます。

4.まとめ

 基礎控除額を超える遺産がある場合は,相続税の支払いをしなければなりません。
 その場合には,自分の相続税の支払いだけではなく,他の相続した人の相続税まで負担しなければいけなくなることもあります。
 遺産分割のやり方,相続税の納税手順などの工夫が必要になります。

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