自分が選んだ人に必ず自分の後見人になってもらえるのでしょうか(任意後見)

1.任意後見契約(任意後見契約に関する法律第2条)

 本人の判断能力が精神上の障害で不十分になったとき,自分の療養看護・財産の管理についての代理権を,後見人に与える委任契約です。

 代理権を与える後見人をだれにするか,療養看護・財産の管理の範囲や内容をどうするかについて,本人の判断能力があるときに任意後見受任者となる相手と契約を結ぶことで,決めることができます。

 この任意後見契約の効力は,契約締結時ではありません。任意後見監督人が家庭裁判所によって選任されたときから契約の効力が生じます。
 契約の効力の発生時期についての特約がついた委任契約ということになります。

2.任意後見人の資格

(1)任意後見契約の効力発生の有無

 任意後見契約が有効になるには,家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときからです。とはいえ,必ず選任が行われというわけではありません。
 家庭裁判所は,場合によっては任意後見監督人を選任しないこともあります

 任意後見監督人が選任されないかぎり,任意後見契約が有効になることはありません。
 したがって,任意後見契約が意図した目的をはたすことができません。

(2)任意後見監督人を選任をしない場合(任意後見契約に関する法律第4条)
ア 後見人の欠格事由に該当する者(民法847条で4号は除く)

①未成年者
②家庭裁判所で解任された法定代理人,保佐人又は補助人
③破産者(復権を得ていないとき)
④行方不明者

イ 本人に対して訴訟をした者やその配偶者・直系血族

原告として訴訟をした場合だけでなく,被告として訴えられた場合もこれに含まれます(判例・学説であるようです)。

ウ 不正な行為,著しい不行跡,その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

 民法の後見人の解任事由(民法846条)と同じ趣旨の規定です。

①不正な行為
 違法行為や社会的に非難されるべき行為。背任行為や財産流用など。

②著しい不行跡
 品行が著しく悪いこと

③後見人の任務に適しない事由
 以下のことなどの一切の事情を考慮して判断をします(民法843条4項)。
・本人と任意後見人との利害関係
・年齢・人間関係
・前科等で財産管理の不適切なおそれ
・療養看護義務不履行などの配慮

(3)法人による任意後見人
ア 任意後見人の法人

 法人も任意後見人になることができます。
 法人の種類は問いません。株式会社などの営利法人でも可能です。

 任意後見人が法人だからといって,特別な規定があるわけではありません。
 しかし,法人としての特性から自然人の任意後見人にはない注意も必要となります。

イ 法人の任意後見人の場合の注意点

①法人の種類
 任意後見人の資格は,法人だからといって変わるところはありません。
 しかし,任意後見の仕事の性質から考えると,営利目的の法人を任意後見契約の受任者とする場合には,慎重な考慮が必要になります。
②本人の入所先施設
 社会福祉法人などの非営利法人であっても,本人と利益相反が生じやすい立場の法人は避ける方がいいです。
③長所・短所
 長所:親族間の争いから中立,後見人の年齢に左右されずに長期的な支援が可能。
 短所:後見人と本人との人間関係が希薄,法人の倒産の危険

 法人の任意後見受任者を考えている場合には,任意後見人として本人を支援するだけの適格性があるかどうかを,多面的で慎重に判断することが望まれます。

3.まとめ

任意後見人にしたい人が,任意後見人の欠格事由に該当したり,任意後見人の任務に適しない事由がある場合は,任意後見監督人が選任されません。その結果,任意後見契約の効力が生じず,意図した支援が受けられないことになってしまいます。

 つまり,家庭裁判所が任意後見監督人を選任しないために,自分が任意後見人として選んだ人の任意後見人としての支援を受けられないということも出てきます。

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