離婚時に作成した遺言書を今後書き換えないという離婚協議事項は無効。

1.協議離婚

(1)離婚の種類

 離婚は裁判による離婚と協議による離婚があります。
 裁判による離婚は離婚原因が必要ですが,協議離婚ではそういった制限は一切ありません。別れたいというふたりの意見が一致することによって,離婚できます。

(2)離婚協議書

 離婚協議書は離婚についての契約書です。
 離婚にあたり財産分与,子供の親権者をだれにするかや養育費などについて協議します。協議した内容を文書にしたり,公正証書にしたりします。

2.離婚協議書における遺言撤回の禁止条項の有効性

(1)遺言の撤回(民法1022条)

 遺言者はいつでも以前にした遺言を取り消す(正確には撤回)ことができます。以前の遺言の全部でも,その一部でも自由に取り消すことができます。

(2)離婚協議書における遺言撤回の禁止条項

 たとえば,離婚時に夫の財産をすべて夫婦の子どもに相続させるという遺言書の作成をします。そして,その遺言書を書き換えることは今後おこなわないと約束します。
 その主旨は,今後夫が再婚するかもしれない次の配偶者や新たな夫婦間に生まれる子供には夫の財産を渡したくないということです。

(3)遺言撤回の禁止条項の有効性(民法1026条)

 遺言撤回の禁止条項は無効です。
 民法1026条において遺言の撤回権の放棄は禁止されています。
 遺言者はいつでも理由のあるなしにかかわらず自由に撤回できます。遺言の撤回ができるのは遺言者本人のみであり,代理人がすることはできません。
 また,遺言撤回の表明が遺言とともになされ,あるいは受遺者やその他の者との契約によろうが,その遺言撤回の表明は無効です。

具体的には,
 遺言書中に「これが最終の遺言であって,撤回することはない」と表明したり,受遺者その他の者と「今後遺言は撤回しない」ことを約束したりしても,それによって遺言の撤回を阻むことはできません。

3.まとめ

 

 離婚時において作成した遺言書の内容の書き換えを禁止したり,強制したりすることは不可能です。
 できるのは,離婚した相手方の自らの意思として離婚時の遺言書の内容を維持してもらうことだけです。離婚した相手と良好な関係を維持するのは難しいとは思いますが,離婚後も円満な関係をできる限り維持するしかありません。

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