死後離婚(姻族関係終了届)は遺産相続・遺族年金とは無関係

1.死後離婚(姻族関係終了)

(1)死後離婚の意味

 夫が亡くなった後、結婚によって生じた義理の親族関係を終了させることを俗に「死後離婚」と呼び、話題になっています。
 「死後離婚」という法律の言葉はなく、「姻族関係の終了」と法律では呼んでいます。
 死後離婚(姻族関係終了)の届けは配偶者に先立たれた者以外は届出をすることができません。(民法728条2項)
 義理の両親(しゅうと)から死後離縁を言い出すことはできません。姻族関係終了の意思表示をできるのは生存配偶者だけです。

 これ以降は妻の立場から見た姻族関係をもとに話を進めます。妻に先立たれた場合の夫であっても取扱いは同じです。

(2)死後離婚(姻族関係終了)の効果

 結婚することによって生じた姻族関係を終了させることになります。その効果は離婚と同じだと考えるとわかりやすいです。
 そんなこともあって、夫死亡後の姻族関係終了を離婚になぞらえて死後離婚と名付けたのではないでしょうか。姻族関係とは配偶者の血族と結婚を機に親族関係を結ぶことです。
 手続は姻族関係を終了したいと望む残された配偶書の届出だけで終了します。

ア 親族間の扶け合い・扶養義務の消滅

 妻は死亡した夫の両親と同居していても、親族間の扶け合いの義務はありません。(民法730条)
 特別の事情が無い限り両親の扶養の義務はありません。(民法877条2項)

イ 復氏

 婚姻時に妻が夫の姓を名乗っている場合、希望するなら婚姻前の姓に戻すことができる。(民法751条1項)
 離婚の場合には復氏は離婚にともない当然になされますが、死亡解消の場合には本人の自由な意思にまかされています。

 復氏に際して祭祀主宰者である場合には新たな祭祀主宰者を決めなければなりません。(民法751条2項が準用する769条)

ウ 直系姻族間の結婚の禁止

 妻と先に死亡している夫の父親(しゅうと)とは死後離婚(姻族関係終了)後も結婚は禁止されます。

エ その他

 死後離婚(姻族関係終了)に関することについて次の投稿も参考にしてください。
  「夫死亡後の嫁の立場
  「夫と同じ墓に入らなくてもよい方法(実家の墓地に埋葬)

2.遺産相続・遺族年金

 遺産相続・遺族年金は死後離婚(姻族関係終了)とは関係ありません。

(1)遺産相続

 遺産相続の権利は夫が亡くなった時点の親族関係にしたがって相続人が決まります。(民法890条)
 夫が死亡後に姻族関係終了届けをおこなっても相続人の地位に影響ありません。

(2)遺族年金

 遺族年金は国民年金法と厚生年金保険法などに基づいて、被保険者が死亡した際、残された遺族に支給される公的年金です。遺族であるという資格の者に支給される年金ですので、死後離婚(姻族関係終了)とは関係ありません。また、復氏をおこなっても遺族年金の支給に影響しません。

 ただ、再婚をすることによって遺族年金の受給資格を失います。また、再婚後離婚しても遺族年金は復活しません。

3.まとめ

 

 死後離婚(姻族関係終了)によって、先に死亡した姻族との権利・義務は終了します。俗にいう縁を切った関係になります。
 死後離婚(姻族関係終了)では相続人の地位、遺族年金の受給者としての地位を失うことはありません。

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