相続と農地法(闇小作,名ばかり農地)

 「闇小作」とは農地法の許可を得ないで農地を貸し借りすることをいいます。「名ばかり農地」とは農地という取扱いに農地法上はなっているのですが,耕作が放棄され実状は荒れ地になっている土地のことをいいます。

 

 こうしたことが発生する原因となっている農地法の許可制度について相続という観点から考えてみたいと思います。

 

 相続した人が相続した農地を売ることも,貸すことも,耕すことも出来ないときに「名ばかり農地」が発生します。売ることができずに農地法の許可が得られないまま農地を貸すことにともない「闇小作」が発生します。

 

 農地を相続した相続人は農地法の許可はいりません。届出の義務はありますが,相続人が農業に従事していてもいなくても許可は不要です。

 

 それまで農業とは縁のない生活を送ってきた相続人はその農地で耕作を続ける。あるいは売却・貸借するかです。農業を営んでいる両親を残して都会に子供たち全員が出てしまうという家庭もかなりの数にのぼるのではないかと思われます。

 

 耕作を続けられない相続人は農地の売却をしたいと考えます。しかし,売却するには農地法上の許可が必要になります。宅地に転用可能な市街化区域内の農地などであれば売却はたやすいかもしれませんが,転用の許可が難しい農地の売却は困難を極めます。

 

 農地を農地として売却するにも許可が必要です。相続した農地の近隣の所有者に売却しようとしても,高齢化が進んでいる地域ですと買い手がいないことになります。そもそも,効率的農業に適さない地域として農業の近代化から取り残された地域が多いので近代的農業の専業事業者は買うのを躊躇します。

 

 野菜などを趣味で栽培をしたいと田舎暮らしを希望する定年退職者などに売却できるのであれば好都合なのですが,ここにも農地法の壁があり許可が下りないのです。農地は農業に従事しているものでないと購入することが出来ないのです。購入面積も含めてたとえばここ山梨県甲府市では30アール(一部地域は20アール)以上の耕作面積が必要とされています。家庭菜園のレベルを超えています。

 

 売却でなくて貸すことにしても事情はおなじです。借り手が30アール以上の農業規模でなければ農地法の許可が出ません。農業を本気に継続して営んでいこうとする人でなければ農地を買うことも借りることも出来ません。家庭菜園のレベルの農業を考えている人は対象ではないのです。

 

 農地法の許可制度の運用では対応しきれない農地利用の現状からも日本の農業が抱えている課題・矛盾が見て取れます

 

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