遺骨を祀る祭祀主宰者はどう決まるか。

 前回のブログ「遺骨は誰のものか(遠野なぎこ,遺骨は家族に渡したくない)」で,遺骨は祭祀を主宰すべき者に帰属するという話をしました。


 今回は,祭祀を主宰する者について,指定される人の資格・指定の方法・慣習の意味などををもうすこし細かく見ていこうと思います。

 

一 祭祀主宰者の決まり方

 

 前回お話をしたように祭祀承継者は次の順番によって決定します。

①被相続人の指定
②指定がない場合には慣習
③慣習が明らかでないときは家庭裁判所が指定

 

二 被相続人による祭祀承継者の指定

 

 被相続人が祭祀主宰者を指名します。

 

(1)祭祀主宰者の資格

 祭祀主宰者の資格には制限はありまん。

①相続人である必要はない。
②親族関係の有無は問わない。
③氏(姓)同一である必要はない。
④複数人でもかまわない。

 

(2)祭祀主宰者指定方法

 祭祀主宰者の指定の方法にも制限はありません。外部から祭祀主宰者が指定されたことがわかれば,それで十分です。

①生前・遺言のいずれでもよい。
②書面・口頭のいずれでもよい。
③明示・黙示のいずれでもよい。

 

(3)相続人の合意による指名の当否

 相続人が祭祀主宰者を指名しなかった場合,相続人がその合意によって祭祀主宰者を指名できるかについては,裁判所の判断は分かれているようです。

 

三 慣習

 

 被相続人(亡くなった人)が祭祀主宰者を指名しなかった場合には,慣習に従って決めます。

 

 慣習は被相続人の住所地の慣習をいいます。出身地や職業による特別な慣習があればそれに従います。
注意が必要なのは,家督相続,長子承継(長男が後を継ぐ),「異姓をを祀らず(同姓の者が祖先を祀ること)」などは,ここで言う慣習ではないということです。家制度に関連するものは慣習ではないとされています。勘違いをしやすいところです。

 

四 家庭裁判所が指定

 

(1)家庭裁判所への手続

 被相続人が祭祀主宰者を指名せず,慣習もはっきりしない場合は,家庭裁判所が祭祀主宰者を指名します。
相続人その他の利害関係人の申立てによって調停・審判の手続によります。

 

(2)家庭裁判所の判断基準

 裁判所の判断基準は以下の項目を総合して判断するといわれています。

①承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係
②承継候補者と祭具等の間の場所関係
③祭具等の取得の目的や管理等の経緯
④承継候補者の祭祀主宰の意思や能力
⑤その他一切の事情(利害関係人等の生活状況・意見など)

 

 祖先の祭祀は,今日もはや義務としてではなく,死者に対する慕情,愛情,感謝の気持ちによってなされるものであるので,被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって,被相続人に対して上記のような心情を持つものを祭祀主宰者とすることになります。。

 

五 祭祀主宰者の地位

 

 祭祀主宰者に指定されものがその指名を辞退できるか,また祭祀財産を放棄できるかについては法律の規定がありません。
 たとえ承継したとしても,祭祀を実際におこなう義務はなく,また祭祀主宰者であるからといって相続分が法律上上乗せされるわけではありません。

 

 祭祀主宰者は,祭祀財産を承継後に自由に処分・売却することができます。

 

六 まとめ

 

 祭祀承継者に誰がなるのかは,多分に心情的なものであり,財産的な利害あるものではありません。それだけに一旦こじれると感情的な対立に発展してしまいます。
 遺骨の管理にについてなどがその例です。また,最近では臓器移植にともなって遺体の帰属が問題になっています。遺体は祭祀承継者に帰属するという判決もでています(平成元年7月18日最高裁判決)。

 

 最近では墳墓の管理や法事などの費用を避けたいが為に祭祀を承継して祭祀主宰者になりたがらないという事例も出てきているようです。 


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