貸金庫内を保管場所とした遺言書の行方

遺言書を貸金庫に保管した場合のことを,もう少し考えてみたいと思います。
遺言書をどこに保管するのが適切であるかについては,前回検討したとおりです。
(前回ブログ:「自筆による遺言書(自筆証書遺言書)の保管場所」)

 

1 貸金庫契約の法的性質と相続

 

(一)貸金庫契約の法的性質

 賃貸借契約とするのが通説のようです。あるいは,賃貸借契約類似の無名契約です。
銀行は次のような義務があると考えられます。

①貸金庫の貸与
②安全な場所の提供
③貸金庫の保全
④貸金庫の開閉への協力
⑤内容物の有無・内容物の個性には不関与

(二)貸金庫契約の相続

 貸金庫契約の借り主の立場は相続の対象となります。
相続人が複数いる場合には,遺産分割が終了するまでは誰かひとりの相続人のものではなく,相続人みんなのものとなります。こうした状態を共有,または準共有と言います。ここでは賃借権という債権ですので,準共有と言います。

 

(三)共有物の管理

 貸金庫の開扉や貸金庫内のものの持ち出しについては,共有物に対する管理の規定に従った処理されることになります。

 

(1)共有物の変更(民法251条)

 変更は共有者全員の同意が必要となります。変更には売却などの処分も含まれます。

(2)管理行為(民法252条本文)

 管理行為とは,共有物の変更をともなわない利用や改良行為を言います。この場合は,持分の過半数の同意が必要となります。

(3)保存行為(民法252条ただし書き)

 保存行為とは,共有物の現状を維持する行為を言います。この場合は,各共有者がひとりでもできます

 

2 貸金庫内の遺言書の閲覧または持ち出し

 一部の相続人による貸し金庫内の遺言書の閲覧,持ち出しについてみていきます。相続人の全員の同意がある場合には当然可能なのは言うまでもありません。

 

(一)遺言書の閲覧

(1)貸金庫の開扉

 他の相続人の同意なしで貸金庫を開けることは,保存行為であるので可能です。
貸金庫利用権の帰属や内容などに変更を加えるわけではないので,処分・利用・改良のいずれの行為にも当たりません。

(2)貸し金庫内の遺言書の閲覧

 他の相続人の同意なしに貸し金庫内の遺言書を閲覧することは,相続人の調査行為(民法915条2項)の一環として認めてもよいと判断されます。

 ただ,貸金庫契約上の内容物引渡請求には当たらないとして,消極的な解釈がなされることもあるようです。

 

 実務的には,銀行の善管注意義務と相続人の相続調査行為の権利とを衡量して,特別に銀行の責任が問われる事情がない場合には,認める傾向があるようです。その場合でも,金庫内の中の物を持ち去ったなどの苦情を避けるために,公証人の立会を求め事実実験公正証書を残すなどの工夫がされています。

 

(二)貸し金庫内の遺言書の持ち出し

 他の相続人の同意なしに,遺言書を検認のために持ち出しすることを希望することも考えられます。これについては,理論上もまた実務上も認めていないようです。したがって,遺言者を裁判所の検認を受けるために持ち出しを希望する場合には,全員の同意が必要ということになります。

 

3 まとめ

 貸金庫内に遺言書を保管することは,相続人善意の同意がなければ持ち出すことができないと言うことを考えると,あまり適当ではないということができます。

 一番確実な方法は,自筆証書遺言ではなく,遺言執行者を指定した公正証書遺言を作成することだという結論になります。

 

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