養子をとると他の子の遺留分が減ってしまいます。

 養子縁組によりもらえるはずの遺留分が減ってしまうということが出てきます。また,このことを意図的に利用して,遺留分をすくなくするための養子縁組も行われています。

 

神奈川県相模原市の40歳代の男性は今年2月、97歳で亡くなった祖母の公正証書遺言があることを知った。作成されたのは2011年7月。そして、その内容を知って愕然とした。全財産を男性の一つ年下の妹に相続させると書かれていたのだ。
男性の両親は20年ほど前に離婚し、妹とともに母の実家で祖母と暮らしてきた。母は13年9月、病気で亡くなり、相続人は男性と妹だけ。仕事は忙しかったが、祖母と同居しながら、普通の交流はしてきたはずだった。それなのに、自宅に加え、隣接する土地に所有しているアパート2棟、預貯金などすべてが妹へ渡ることになった。
しかも、妹は、男性に知らせることなく、祖母と養子縁組をしていた。男性が遺言書のあるなしにかかわらず遺産を相続できる最低限の割合(遺留分)も、4分の1から8分の1に下がってしまっていた。

食い物にされる認知症患者 悪用される成年後見制度 〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版

 

1.遺留分とは

 

 遺留分というのは,法定相続人が相続財産から最低限受け取ることができるとされている割合です。
 兄弟姉妹には遺留分はありません。

 

2.遺留分の割合

 

①相続人が父母,祖父母などの直系尊属だけの場合は,相続財産の三分の一が遺留分です。
それ以外の場合には,相続財産の二分の一が遺留分となります。

 

3.冒頭に掲げた記事についての遺留分の割合

 

養子縁組と遺留分(1)祖母と妹が養子縁組をしない場合の遺留分

 

 祖母の死亡にともない母の遺留分は,祖母の財産の二分の一です。母は祖母の死亡以前になくなっているため男性と妹は母に替わった代襲相続をすることになります。

 

 母の遺留分は他に祖母の相続人がいませんので二分の一。母の代襲相続人は兄・妹の2名ですので母の遺留分のを半分にした者が男性の遺留分となります。
 結局,男性の遺留分は4分の一となります。

 

参考ブログ:「遺言によっても奪えない遺留分(相続のトラブルを複雑にさせる遺留分制度)

 

(2)祖母と妹が養子縁組をした場合

 

 祖母の死亡にともない祖母の法定相続人は,母と養子縁組をして祖母の子となった妹の二人になります。
 祖母の法定相続人の遺留分は二分の一です。祖母の子各自それぞれの遺留分は,二分の一の二分の一ですので,母の遺留分は四分の一となります。
 男性の遺留分は母に子が二人いますので,母の遺留分の半分になります。結局,母の遺留分4分の一の半分,八分の一が男性の遺留分という計算になります。

 

4.遺留分を減少させることを目的とする養子縁組の有効性

 

 「精神的なつながりをつくる意思」があるのであれば,特定の人の相続分を害する意図があっても養子縁組は有効であるとするのが判例のようです。

 

参考:「相続分ないし遺留分の減少を目的とした養子縁組の効力

 

5.まとめ

 

 養子縁組制度を利用することによって,この記事の例のように特定の人間の遺留分を減少させることが可能です。
 しかし,記事の例でもわかるように相続紛争の火種になりかねません。非常にトリッキーですし,あまりおすすめできる方法ではないと思います。

 

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